プラットフォームの「自動処理」の悪用も課題に

Q6 はあ、なんだか霧の中にいるような……。

A6 ただ、削除された富山の作家のポーチの動画をたまたま見ることができたが、少なくとも編み物自体が著作権侵害という主張はやや厳しそうに思えた。大変すてきな、使いやすそうなポーチではあるが、特段の絵柄などもなく、造形自体も比較的一般的なものに見えたためだ。

 そうでなくても、実用品のデザインは著作権では守られにくい傾向があるし、個別の編みパターンに話を絞るなら、かつて知財高等裁判所の判決で、ある編みデザインを「抽象的な構想またはアイデアであって著作物ではない」と判断したものがある。仮にブックカバーもこれと同程度であるとすると、富山の作家側の編み物を見るだけでも、これが何かに対する著作権侵害に当たるケースはかなり限定的だろうと思えるのだ。

 無論、この件を離れた編み物一般では、著作権侵害の可能性は十分にあり得る。例えば、削除申請した京都の作家の他作品でも、この例などは恐らく著作物として保護される可能性は低いが、こちらのページの下のほうの例だと著作物として守られる可能性はかなり上がってくる気がする。程度問題なのだ。

Q7 なるほど……。もしも本当は著作権侵害ではなかったとしたら、京都の作家は削除の制度を悪用したことになって、敗訴するのですか?

A7 論点はそれだけではないが、敗訴の可能性は上がるだろう。削除などの、プラットフォームの「自動処理」の悪用については、この数年で大きな問題になっており、また機会を改めて話そう。

Q8 怖いですね。この件を離れて、YouTube動画はどのくらい似ているとアウトなんですか?

A8 著作権侵害の基準については前回のインタビュー(参考記事:「二次創作“炎上”の分岐点 著作物のトレースはどこまでOKか?」)でも少し触れたが、大きな考え方は同じだ。まず、いくら似ていても、偶然似たものは著作権侵害ではない。相手の作品を知った上で、それと実質的に似た作品を作ると、著作権侵害(翻案権侵害・複製権侵害)などに当たることになる。

 もっとも、著作権は創作的な表現を守るものなので、あくまでもそのレベルで似ていることが条件だ。例えば「ありふれた・定型的な表現」のレベルで人の作品と似ていても、当然問題ない。だから、既に存在しているデザインや文章などを自分の動画で使った人は、それをいくら他人にまねされても、そのレベルでは侵害を主張できない。

 同じく、具体的な表現と言えないような「アイデア」は著作権では守られないし、人の作品からアイデアを借用するのは著作権的には自由だ。この意味で、いくら独創的な手法でも、あくまで技法・手法のレベルをまねしたにすぎないなら、著作権侵害は成立しないのだ。

 両者の類似している箇所を抜き出して、そこからありふれた表現(先行作品にもありそうな表現)やアイデアレベルでの類似点を落としていって、それでも残る類似箇所があれば、著作権侵害の可能性は上がる、ということになる。

 逆に言えば、参考にした人の作品がある場合に、ありふれた表現や根底にある着想レベルを超えて創作的な要素が似てしまっていると、危ない。こう考えるのが1つの指針になるだろう。