もはやネット社会の定番とも言える、「人の作品をトレースして自分の作品として発表」→「相手、あるいは善意の第三者が告発」→「ネット・メディアで炎上」→「謝罪・撤回・バッシング」の頻発。トレースは、それほどいけないことなのか? 著作権に詳しい福井健策弁護士に聞いた。

(イラスト/いらすとや)
(イラスト/いらすとや)

Q1 トレースは違法なのでしょうか?

A1 実は、必ずしもそうではない。トレースの程度によるのだ。例えば、漫画のキャラクターを表情やポーズ、衣装までなぞって描き、背景と細部だけ変えたとしよう。これは相当な確率で著作権侵害となる。

 他方、以前も論争になったことがあるが、雑誌の写真からモデルの人物の輪郭だけをトレースして、表情や衣装、タッチは完全に自分のもので描くような場合は、つまり実在の人物の姿勢だけが借りられている。この場合、著作権侵害に当たらない場合も少なくないだろう。

 著作権とは、人の「創作的な表現」を守るもので、言い換えると「その人ならでは表現上の特徴」が借りられていないと、少なくとも法的な著作権侵害ではない。無論、モデルのポーズにも写真家の独創が表れていることはあるだろうが、あまりに侵害になる範囲が広がってしまうと、ありとあらゆる模倣やコピーが禁止されるということになってしまい、我々の文化にとってはかえって危ないのだ。つまりは、バランスであり、程度問題だ。

Q2 そうなのですか? トレースは駄目で、目でコピーするのはセーフと聞いたのですが……。

A2 うん、それは都市伝説だ。著作権法では、(1)他人の作品に基づいて(「依拠性」という)、(2)その表現上の特徴が再現されているか(「類似性」という)、の両方がそろえば著作権侵害と判断する。再現の手段は問わないので、見てまねしようが、表現の特徴が再現されていれば侵害だし、トレースしようが、そこに至らない程度の要素を借りたにすぎないなら、侵害ではないのだ。

Q3 でも、人々はトレースに厳しいですよね。

A3 トレースの場合、何と言うか、より怠惰な感じがするし、侵害の動かぬ証拠と受け取られやすいということだろう。

Q4 パロディーや二次創作に比べると、明らかに厳しい気がします。

A4 そこだ。拙著でも整理したことがあるが、パロディーや二次創作は、通常の盗作とは少なくとも2つの点で違う。

関連リンク(クリックで別ページへ):
『改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ』(福井健策著)
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