緊急事態宣言の解除で、やっと部分的な再開も見られるようになってきた、音楽・舞台・スポーツなどのライブイベント界(本稿執筆時点)。いったい、公的な支援策にはどんなものがあり、ライブイベント関係者はどこまで救われるのか。現場支援の活動を続ける福井健策弁護士に聞いた。
緊急事態宣言こそ解除されたが、世界を席巻していたシルク・ドゥ・ソレイユの倒産が衝撃を与えるなど、音楽・舞台での倒産や離職者の大量発生の懸念はむしろ高まっている。まさに、戦後最大の危機といえる状況だ。政府もようやく重い腰を上げ、公的な支援策が次々発表されている。しかし、こちらも消費喚起の「Go Toキャンペーン」の事務委託費が高額すぎると批判されるなど、本当に必要な人々に支援が届くのかは心もとない。
Q1 被害はそんなに大きいのですか?
A1 ライブイベント界は、2020年2月26日、他のどの業種よりも早く自粛を求められてこれに従い、直前のイベント中止でまさに甚大な損失を被った。その後、自分も世話人の末席に連なり、日本の主要な演劇系の団体ほとんどが集まって「緊急事態舞台芸術ネットワーク」を結成した。
先行した緊急調査では、動員規模の大きい16社の5月末までの中止・延期公演の被害額に絞っても、合計3000ステージ、約160億円の純損失だった。演劇系は零細な団体が多いことを思えば驚くべき金額で、年内に対象を広げれば損害ははるかに大きい。周辺への経済損失はさらに桁が大きく、日本政策投資銀行は先日、3~5月の地域の祭り、コンサート・舞台・スポーツなどのイベント中止による経済損失は、3兆円にのぼると発表した。
加えて、イベントは再開するのも社会で最後といわれるのだから、いつ連鎖倒産が起きてもおかしくないほど事態は深刻だ。緊急事態舞台芸術ネットワークでも、政府への支援要請、現場支援、再開ガイドライン作りなどの行動を続けている。
Q2 支援制度が発表されましたね。
A2 政府は当初から「自主休業」なので、という理由で損失の補償を否定している。それでも2度の補正予算の中で様々なライブイベントや芸術文化の支援制度が発表され、規模でいえば欧米に全く遜色ないほど充実してきた。
ただ欠点は、あくまで損失補償の形を避けて支援しようとするので、複雑な補助金制度の形を取ることが多く、ほとんどのイベント関係者には極めて分かりにくいものになっているのだ。また運用を間違えると、本当に支援が必要な人々とは違うところに補助金が行ってしまう可能性もある。支給時期も遅い。
最初から、満額ではなくても「受けた損失の規模に応じた公平な補償」にしていればはるかに早く、制度もシンプルだったとは思うが、ともかく生まれた制度を活用してほしい。
Q3 具体的にはどんなものがあるのでしょうか。
A3 複雑だ。そこで実は、緊急事態舞台芸術ネットワークでは、自分にはどの支援制度が利用可能か自己診断できるフローチャートを公開したので、ぜひ活用してほしい。
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