2020年3月10日に閣議決定され国会に提出されていた「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が同年6月5日に国会で可決・成立、6月12日に公布された(令和2年法律第44号)。改正のポイントおよびデータビジネスへの影響、改正の意義のうち、後編では主に開示のデジタル化や仮名加工情報などについて、中崎尚弁護士に聞いた。
<前編はこちら>
Q10 権利行使が強化され、権利行使条件が緩和されたとのことだが、どのように強化されたのか。
A10 現行法でも、一定の条件を充足する場合は、利用停止・消去・第三者提供の停止請求の権利を有することが明確化されている。しかし、自分の個人情報について事業者に利用停止または消去等を求めることができる場面が狭すぎるなどの不満が生じていたことから、改正法では、利用停止・消去・第三者提供の停止請求の権利を有する場面が以下のように拡大された(改正法第30条5項)。これらの追加された場面に関しては、事業者に過度の負担が生じないよう、停止・代替措置によることが認められている(同6項)。
Q11 保有個人データの公表事項が拡大されると耳にした。どのような項目が追加されたのか。
A11 現行法でも、保有個人データについて一定の事項を公表等する義務がある(法第27条1項、施行令第8条)。しかし、個人データの主体である国民からは、情報が不足している、分かりにくい、という意見が出ていた。このため、今回の改正法施行のタイミングに合わせて、個人情報の取り扱い体制や講じている措置の内容、保有個人データの処理の方法などについても公表義務の対象とすることが検討されている。これらの公表事項は、法律ではなく政令によって定められるため、実際にどのような事項が公表義務の対象となるかは、政令の改正を待つ必要がある。
Q12 開示のデジタル化とは何か。事業者はどのような対応が求められるか。
A12 現行法では、保有個人データの開示は書面の交付による方法が原則とされているが(法第28条2項、同法施行令第9条)、時代遅れとの意見が出ていた。改正法では、開示請求で得た保有個人データの利用などにおける本人の利便性向上の観点から、本人が、電磁的記録の提供を含め、開示方法を指示できるようにし、請求を受けた個人情報取扱事業者は、原則として、本人が指示した方法により開示するよう義務付けることとされた(改正法第28条第1項・第2項)。このため、事業者は、電磁的記録による開示を行うことができるように準備が必要になる。
もっとも、当該方法による開示に多額の費用を要する場合や、その他の当該方法による開示が困難である場合にあっては、書面の交付による方法による開示を認めることとし、その旨を本人に対し通知することを義務付けることとされた(改正法第28条第3項)。これによって事業者の負担はある程度軽減が見込まれるが、詳細は委員会規則の改正を待つ必要がある。
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