近年、QRコードなどを利用した決済事業者の参入が相次ぎ、キャッシュレス決済への関心が高まっている。2020年4月21日、公正取引委員会は、QRコードなどを用いたキャッシュレス決済サービスについての実態調査を行い、報告書を公表した。今回は、キャッシュレス決済において、独占禁止法(競争法)上問題となっている点について、弁護士の二木康晴氏に聞いた。

公取委の報告書で、実態として高額の手数料を課し、競争関係の成立を阻害している可能性があると指摘された大銀行に立ち向かう、コード決済事業者のイメージ(写真/Shutterstock)
公取委の報告書で、実態として高額の手数料を課し、競争関係の成立を阻害している可能性があると指摘された大銀行に立ち向かう、コード決済事業者のイメージ(写真/Shutterstock)

Q1 今回の公正取引委員会(公取委)の報告書はどのようなものか。

A1 銀行などを中心にサービスが提供されてきた金融分野において、近年、フィンテック企業の新規参入が相次いでいる。新たなテクノロジーを活用した新規参入が進むことで、競争が活発化し、利用者の選択肢の増加、利便性の向上などが期待されている。

 今回、公取委は、銀行129行、資金移動業者48社、消費者4000人にアンケート調査を行い、銀行とノンバンクのコード決済事業者の関係について詳細に分析している。

Q2 公取委はなぜ銀行とコード決済事業者の関係を問題としたのか。

A2 例えば、コード決済の利用者の給料や収入は銀行口座に振り込まれるのが一般的である。そのため、利用者がコード決済を利用し始めるには、まず銀行口座からコード決済に利用するアプリのアカウントへ、チャージしなければならない(クレジットカードからのチャージもあるが、事業者の手数料負担が高めになる)。

 また、利用者が、コード決済を利用できる「加盟店」で決済を行った後、加盟店がその入金を自らのアカウントから引き出すためには、自らが有する銀行口座へ振り込むのが一般的である。

出所:公正取引委員会「QRコード等を用いたキャッシュレス決済に関する実態調査報告」2ページ
出所:公正取引委員会「QRコード等を用いたキャッシュレス決済に関する実態調査報告」2ページ

 すなわち、コード決済事業者の決済プロセスの始点と終点には、銀行口座が絡むことになり、実際に決済事業者が利用者と加盟店にサービスを提供する場合、銀行口座とは切っても切り離せない関係にあるのである。

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