AI(人工知能)による裁判手続きは公正だろうか。日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏が、日本では公正な裁判が受けられないとして日本から“無断”で出国したことなどから、「公正な裁判」に関する議論が巻き起こっている。今回は、AIによる裁判について、弁護士の二木康晴氏に聞いた。
Q1 AIによる裁判は導入されているのか。
A1 現時点では、AI自体に最終的な判断までを委ねる試みはなされていない。ただし、裁判の審理の過程でAIを活用すること自体はなされている。
例えば、中国・海南省の高級人民法院では、量刑の判断などをAIが補助するシステムを導入している。同システムは、過去の判例を分析し、事案の重要要素などを自動的に抽出し、判決書や関連法律文書などの作成を補助するとのことである。
また、今後は、AI自身に裁判の判断を任せる試みも出てくるかもしれない。
2019年、エストニアの法務省は、同国の最高データ責任者に対して、少額の紛争(7000ユーロ未満)を裁定できる「ロボット裁判官」を設計するよう指示したとのことである。まだ詳細は明らかとなっていないが、紛争の当事者が書類や関連情報をアップロードすると、紛争についてAIが判断を下すようである(その判断に対しては通常の裁判所へ上訴することもできる)。
Q2 AIによる裁判ではどのようなことが期待されるか。
A2 AIを活用することで、ある程度、画一的、類型的な判断が求められるような事案について、大量に、迅速に処理することが期待できるかもしれない。
例えば、英国では、駐車違反の異議申し立てを補助する「DoNotPay」というボットサービスがリリースされている。このサービスでは、ボットからの質問に答える形で必要な情報を入力していくと、不服申し立ての書類作成をサポートしてもらえる。
同サービスは、16年にリリースされ、わずか21か月間で25万人が駐車違反に不服を申し立て、うち16万人はその内容が認められ、罰金が取り消されたとされている。
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