今年の流行語候補になってもおかしくない「表現の自由」と「あいちトリエンナーレ」(あいトリ)。『表現の不自由展・その後』の展示への批判、その中止と再開、文化庁の助成金不交付決定などを巡って世論は沸いた。これらは法的に問題はないのか。芸術文化の現場に詳しい福井健策弁護士に聞いた。
表現の自由を5分で教えてください。
なんで毎回そんなに軽いんですか。5分でなんて絶対無理ですし、膨大な議論があって私の手には余ります。ただ、あいトリで問題になった公的な言論空間(パブリック・フォーラム)や税金と表現の自由の関係なら、頑張ってさわりを話してみましょう。
やった! まず、会場を使わせるかどうかは管理者の自由ではないのですか?
民間施設ならばそうなのですが、公的な施設の場合には例えば地方自治法244条という条文があって、「公の施設」は正当な理由がないと住民の利用を拒否できません。有名なのは泉佐野市事件(最高裁1995年判決)で、いわゆる過激派の反対集会であるとして市民会館の利用許可が出なかった件でした。最高裁は、表現の自由・集会の自由の重要性に照らして、他の団体との衝突などの公共の安全への「明白で差し迫った危険」が予見される場合にのみ、利用を不許可にできると判断しています。
ただ、報道されているケースは「使用不許可」ではなくて、主催者が展示中止を決めてますよね?
はい、あいトリもそうでしたし、その後、伊勢市の展覧会では、不自由展で問題になった少女像の画像を画面全体の6%程度で利用した作品が、市側の判断で展示されない件などが起きていますね。
いわばパブリック・フォーラム側の自粛。それは憲法上は問題にならないのですか?
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー