Webニュース記事の見出しで「炎上」の文字を見ない日はないほど、日常的になっている炎上トラブル。いざ自社がその対象となったら、どう対応すべきなのか。ネット炎上対応やネット中傷の削除・発信者情報開示請求などの案件に多数立ち会ってきた清水陽平弁護士に聞いた。

Q1 いわゆる“ネット炎上”の件数は増えているのか?

A1 まず「炎上」とは何か。現状、「炎上」に決まった定義があるわけではないが、ここでは「ある事柄について多くの人が関心を寄せ、批判的な内容を中心に意見や感想、批評などが多数発信されている状況」と定義づけておきたい。批判が炎上の主要素であることは間違いないが、必ずしも批判一色ではなく、擁護や中立的なコメント、論評抜きのシェアなど、その内容は多様だ。

 炎上参加者の実態をデータで浮き彫りにした書籍「ネット炎上の研究」(田中辰雄/山口真一、2016、勁草書房)がある。これには、「炎上参加者はネットユーザーの0.5%」という数字が上がっており、この研究は非常に大きな注目を浴びた。ただ、同調査では、「炎上事件とは、ある人の書き込みをきっかけに多数の人が集まってその人への批判・攻撃が行われる現象です」と前置きしたうえで炎上参加経験を尋ねているため、0.5%という数字は誹謗(ひぼう)中傷をする人に限ったものだ。実際には、より多くの人が意識せずとも炎上に参加しているはずであり、0.5%よりは大きな数字になると予想される。

 どのくらいの規模からネット炎上案件としてカウントするかについては線引きが難しい。Webリスクの支援会社などが独自に、リツイート回数やまとめサイトで記事化されたことなどから算定したデータによれば、着実に増えているようだ。もっともこの手法でカウントする件数は、Twitterやまとめサイトのはやり廃りに左右される面がある。

「Google Trends」でみた「炎上」の検索数の推移
「Google Trends」でみた「炎上」の検索数の推移

 そこで注目したいのが、人々の炎上に対する関心の増減だ。検索ボリュームの変化を時系列で追うことができる「Google Trends」で「炎上」を調べると、増減を繰り返しながらも右肩上がりで推移していることが分かる。これは炎上に興味を持って積極的に炎上ネタ探しをしている人が増えていることを物語っている。その意味で、より火が付きやすく燃えやすい状況になっていると言えるだろう。

メディアをまたいで加速度的に広がる

Q2 企業の炎上トラブルを分類すると?

A2 発信元で分類すると、まず大きくマスメディア報道発とネット発に分けられる。文春砲という言葉もあるように、今なおマスコミによる不祥事などの報道はダメージが大きい。一方のネット発には、一般ユーザー発の告発型、企業発の不適切発信型、そして出所不明のデマがある。

 一般ユーザー発の告発型は、例えば「購入した家電の初期不良で修理を依頼したらこんな酷(ひど)い対応をされた」「元の職場でこんなセクハラ・パワハラ、あるいは残業代未払いがあった」といった具合であり、近時のあおり運転の動画公開などもこれに分類されるだろう。企業発の不適切発信型は、企業広告にジェンダー差別に当たる内容が含まれていたなどの不適切表現、“バイトテロ”に代表される不適切な言動、経営幹部の失言などがある。

 もっともネット発の炎上も、Twitterで拡散されてWebニュース記事になり、従来型マスコミも報じることでさらに拡散に弾みがつく、という流れでメディアをまたいで加速度的に広がっていく。

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