2015(平成27)年12月に改正労働安全衛生法が施行され、一定規模の企業は従業員のストレスチェックの定期的な実施が義務付けられた。そのためのソリューションをクラウド上で提供する企業も多い。その1つ、ラフール(東京・中央)への取材を通して、高橋喜一弁護士が従業員のメンタルマネジメントの最前線を追った。

 メンタルヘルスチェックを企業に義務付けるこの制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止と、労働者自身のストレスへの気づきを促すこと、そしてストレスの原因となる職場環境の改善につなげることにある(※1)

 ストレスチェックは紙ベースで行うことも可能であるが、実施過程の効率化や、実施結果の分析のため、これをクラウド上で行うソリューションも各社から提供されている。今回は2011年から企業のメンタルヘルスケアに特化し、現在は健康経営を実現するための組織改善ツール「ラフールサーベイ」(※2)を提供しているラフールを取材した。

Q1 ストレスチェックが義務化されて3年半がたとうとしているが、企業における労務管理の現状はどうか。

A1 現在のところ、企業の多くは、法令で定める最低限の義務を果たすことで済ませており、ストレスチェックを行うことが最終目標になっているのが現状だ。意義なき義務化になってしまっている例も多数見られ、残念ながら、制度が目指している健康的な職場環境の構築というところに社会全体が向かっているとは、まだ言えないのが現実と思われる。

Q2 最低限の義務を果たすだけでは不十分ということか。

A2 その通り。ストレスチェックの義務付けにより、多大なストレスを感じている高ストレス者については、産業医の面談等を経て、適切な就業上の配慮を行うことは可能になった。しかし、企業による人材活用という観点から考えると、もう少し多角的な視点から分析と対策を行う必要がある。病気や体調不良による欠勤や休職、遅刻・早退によって生産性が低下する現象(アブセンティズム)への対策だけではなく、出勤しているのに何らかの理由・不調を抱え、生産性が上がっていない状態(プレゼンティズム)についての原因分析や対策も重要だからである。

出勤している者への配慮も重要

Q3 プレゼンティズムが重要と言えるのはなぜか。

A3 企業経営において重要なのは、各従業員がそれぞれの能力を最大限に発揮して、組織の生産性を最大化させることにある。そのためには、各従業員が、ストレス、人間関係の悩み、待遇への不満、睡眠不足、体調不良など、さまざまな理由により十分なパフォーマンスを発揮できない状態を解消する必要がある。それは、組織の効率性にとどまらず、従業員の離職防止(エンゲージメント)にもつながる問題である。

 従って、健康上の理由により会社に来られない者への配慮とは別に、現に出勤している者への配慮も同様に重要なテーマとなる。

Q4 確かに、欠勤している人は欠勤以上の非効率を生まないが、出勤している人がさまざまな非効率を生み出すことは確かにあると思われる。そのことは一般的に知られている知識なのか。

A4 その点については、厚生労働省が既に調査を行い、内容は公表されている(※3)。それによると、プレゼンティズムによる損失はアブセンティズムによる損失の18倍とも言われており、この対策が経営的に重要なものであることは論をまたない。

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