2019年4月25日、個人情報保護委員会より「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」が公表され、5月27日まで意見募集が行われた。今回の中間整理の性格とその内容、今後の展開について、データビジネスやオンラインマーケティングへの影響という観点から、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の中崎尚弁護士に聞いた。
Q1 個人情報保護法の見直しはどのようなスケジュールで進められるのか。なぜこのタイミングでの改正なのか。
A1 個人情報保護法は、15年に大幅に改正され、17年5月より施行された。データビジネスの発展のスピードをはじめとする社会情勢の急激な変化を踏まえると、それらを見通して、法律ですべてカバーするのは難しいため、法律の定期的な見直しが必要と判断され、政府は施行後3年ごとに個人情報保護法の施行の状況について検討し、必要に応じて改正等の措置を取ることを方針として定めていた。今回の中間整理は、そのタイトルにある通り、この3年ごとの見直しに向けた中間整理と位置付けられている。
順調にいけば、来年の通常国会に個人情報保護法の改正案が提出されることが見込まれる。
Q2 中間整理はどのような内容か。
A2 個人情報保護委員会は19年1月28日に「いわゆる 3年ごとの見直しに係る検討の着眼点」として各種論点を示した。そして、この論点等について詳細をまとめたのが、今回の中間整理である。この論点等で重要なものとしては、個人情報の利用停止制度の導入、匿名加工情報と個人情報の中間的存在とも位置付けられる仮名化制度の導入、クッキーの位置付けに関する議論、個人情報の漏えい発生時の監督当局への報告の義務化、罰金の強化・制裁金の導入などが上げられる。
利用停止制度導入の検討にとどまる
Q3 利用停止制度とは? 忘れられる権利との違いは?
A3 欧州のGDPR(EU一般データ保護規則)では、個人データの利用に関する異議権や消去権(「忘れられる権利」)が広く認められたのに対し、日本の個人情報保護法では、 個人情報の利用停止は不正取得や目的外利用時のみ認められるにとどまり、消去権はそもそも定められていない。中間整理では、多数の消費者から不満が寄せられていることを踏まえ、個人情報の利用停止等については、個人の権利の範囲を広げる方法を検討しながら、消費者の要望にいかに対応するか、企業側の実態も踏まえつつ具体的に検討するとしている。このため、何らかの利用停止の制度が導入されることが見込まれる。
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