2018年11月、厚生労働省は消費者庁に、「歩行能力の改善」を表示内容に含むいくつかの機能性表示食品が、医薬品的効果の表示を禁じる法律に抵触すると指摘。消費者庁は販売者に対応を求め、既に複数の食品は届け出が撤回された。機能性表示食品と法規制について、フランテック法律事務所代表の金井高志弁護士に聞いた。
「歩行能力の改善」を表示内容に含むいくつかの機能性表示食品について、医薬品的効果の表示を禁じる「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」という)に抵触すると指摘された今回の問題は、特定の疾患を対象に承認された医薬品の中に「歩行能力の改善」という効能効果を標榜したものがあり、「歩行能力の改善」という機能性表示が医薬品の効能効果の表示内容と重複してしまうため、厚生労働省が問題視したものと考えられている。
Q1 機能性表示食品とは何か?
A1 機能性表示食品とは、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、健康の維持および増進に役立つといった、特定の保健の目的が期待できる旨の機能性につき、事業者の責任において、安全性が確保されていることを前提とする科学的根拠に基づいて、容器包装に表示されるものである。
Q2 機能性表示食品制度ができた背景とは?
A2 機能性表示食品制度ができるまで、機能性を表示することができる食品は、特定保健用食品(以下「トクホ」という)と栄養機能食品に限られていた。トクホは、その許可を得るための時間や費用が莫大にかかるものであるため、その数が限定され、また、栄養機能食品には、機能性の表示の制限がなされている。
そこで、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者がそのような商品の正しい情報を得て、様々な商品を選択できるようにする必要があったことから、2015年に機能性表示食品制度が作られた。(i)トクホ、(ii)栄養機能食品および(iii)機能性表示食品の3つは、まとめて、保健機能食品と呼ばれている。
Q3 トクホとは何か?
A3 トクホは、有効性や安全性について国が審議を行い、消費者庁長官が許可を与えた食品であるのに対し、機能性表示食品は、有効性や安全性の根拠に関する情報等について、消費者庁へ届け出を行うことにより、事業者の責任において機能性を表示する食品である。トクホは、消費者庁長官がその有効性や安全性を保証することから、トクホの認証マークを表示することができるが、機能性表示食品は、あくまで事業者の責任において機能性を表示することができるにすぎないため、トクホの認証マークを表示することができない。
また、許可または届け出の手続の過程において、トクホの場合は、消費者庁から厚生労働省に対し、医薬品の効能効果の表示に抵触しないか否かの確認が行われるのに対し、機能性表示食品の場合は、そのような確認が行われない。
Q4 栄養機能食品とは何か?
A4 栄養機能食品は、特定の栄養成分の補給のために利用される食品で、栄養成分の機能が表示されているものだ。栄養機能食品については、機能性表示食品が消費者庁長官に届け出を行う必要があるものであるのに対し、届け出を行う必要がない。食品表示法に基づく食品表示基準の別表に規定されている栄養成分に基づいて機能性を表示することで、栄養機能食品と分類されるものとなる。逆に言えば、食品表示法に基づく食品表示基準の別表によって規定されている栄養成分以外は記載することができない。
食品表示法に基づく食品表示基準の別表に規定されていない栄養成分に基づいて機能性を表示しようとする場合には、機能性表示食品として届け出を行うことやトクホとして許可を得ることが必要である。
Q5 トクホの許可制と栄養機能食品の届け出の違いは?
A5 トクホの手続などで用いられている許可制とは、ある種の国民の活動を一般的に禁止したうえで、国民からの申請に基づき審査を行い、一定の要件に合致する場合、禁止を個別具体的に解除する法的仕組みである。他方、栄養機能食品の手続などで用いられている届出制とは、国民がある行動をとる前または後に、行政機関への届け出を義務づける仕組みのことだ。この届出制は、行政庁に対して、ある行為について許諾してくれるように応答を求めるものではなく、情報を提出する義務が課されるにとどまるため、国民の側から見れば、許可制よりも規制が緩和されたものである。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー