消費者庁は、昨年から今年にかけて公表した3つの報告書をまとめる形で、2018年6月、「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」を公表した。スマートフォンでの打消し表示の在り方について、景品表示法上の考え方や求められる表示方法などが示されている。スマホにおける打消し表示とはいったい何か。事業者はスマホで商品やサービスの内容を説明する際、どこに留意すればよいのか。フランテック法律事務所代表の金井高志弁護士に、ポイントを解説してもらった。

 2008年に、従前の景品表示法の管轄官庁であった公正取引委員会は、「見えにくい表示に関する実態調査報告書―打消し表示の在り方を中心に―」を公表している。この調査報告書は、中高年の消費モニターを対象になされたものであったが、消費者庁は17年7月に、より幅広い年代の消費者を対象とした調査について、「打消し表示に関する実態調査報告書」(以下「17年調査報告書」という)を公表した。

 この17年調査報告書においても、スマートフォン(以下「スマホ」という)で見るWebページ上での打消し表示について記載があったが、消費者庁は続けて、特にスマホにおける打消し表示に関する調査を行った。近年、パソコンは持っていないがスマホは持っているといった消費者が増加する状況の下で、スマホで商品・サービスの購入・申し込みをする消費者が増加し、かつスマホでの広告に特有の問題点があることを踏まえてのことだ。

 この調査結果に基づき、18年5月、景品表示法上の考え方や求められる表示方法等を整理した「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」(以下「スマホ調査報告書」という)を公表したのである。

 その後18年6月7日、消費者庁は、科学的に消費者の視線を分析するアイトラッキング機器を用いた調査について、「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」(以下「視線調査報告書」という)を公表。また同日に、17年調査報告書、スマホ調査報告書及び視線調査報告書をまとめる形で、「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」(以下「実態調査報告書のまとめ」という)を公表した。

打消し表示とは、「(強調表示で示した特典を得るには)この条件を満たす必要がある」など、強調表示からは一般消費者が通常は予期できないが重要な考慮要素を示す
打消し表示とは、「(強調表示で示した特典を得るには)この条件を満たす必要がある」など、強調表示からは一般消費者が通常は予期できないが重要な考慮要素を示す

Q1 そもそも打消し表示とは?

A1 企業が広告をする際に、商品・サービスを一般消費者に訴求する方法として、断定的表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調する表示である強調表示が使われることがある。打消し表示とは、その強調表示からは一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品・サービスを選択するに当たって重要な考慮要素となるものに関する表示だ。

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