ジャパネットたかたの創業者として、ラジオショッピングやテレビショッピングなど、メディアを活用した通販市場を切り開いた髙田明氏。2017年からはサッカーチーム経営へと活躍の場を変えた。エステー執行役エグゼクティブ・クリエイティブディレクターの鹿毛康司がその経営哲学に迫った。
鹿毛康司(以下、鹿毛) 率直な質問ですが、髙田社長は「人」がお好きですか。
髙田明社長(以下、髙田) そうですね。何事も中心は人だと思います。親と子、上司と部下、医者と患者、教師と生徒、すべての関係性において、大切なのは人を感じる心だと思います。
鹿毛 商品そのものに心はありませんが、商品を作る人、使う人には心があります。それをどう見つけていくかが重要です。
髙田 何かを伝えるときには、作っている人の汗とか理念を大事にしながら、そのモノが何のために作られているかを伝えるのが大事だと思います。それは15秒のテレビCMでも同じです。
髙田 人気のタレントさんのイメージだけで、結局商品やサービスの内容がよくわからないCMよりも、もっとストレートなものが良いと思います。ハズキルーペのCMは商品ありきで作られていて、内容がわかりやすい。宣伝効果がとても高いのではないでしょうか。
鹿毛 テレビショッピングでは放送中にお客様が購買行動を起こします。だからそういう表現の方が正しいのでしょうね。ところで、どの商品を売る、逆に売らないという選択はとても重要だと思いますが、そのご判断はどうされていますか。
髙田 その商品が本当に良いものなのか、人のためになっているかどうかは判断基準の1つです。ラジオ通販を始めたころ、コンセントに差し込むだけでネズミ除けになるという商品を提案されました。その商品は粗利は良かったものの、(ネズミ除けの根拠に乏しく)紹介しようという気持ちになりませんでした。ビジネスですので収益も重要ですが、売り上げ、利益は目的ではありません。
兵庫県に豊岡市というところがあります。かつて、カバンの生産量で日本一でしたが、低コストで生産可能な近隣の国に生産拠点が移り変わるなかで、徐々に生産量が落ちていきました。また岡山県の井原市もデニムの生産で有名ですが、やはり生産量は最盛期よりも減っている。いずれも商品は一級品で素晴らしいものばかりです。
それぞれの地域に、文化や伝統を大切に守り続けながらご苦労されている職人さん達がいます。その方々の汗やご苦労を伝えていかなければなりません。青森県のりんご園を視察したこともあります。500本のりんごの木を1つの農家さんが大切に育てている。すべてのりんごに日が当たるように、一つ一つ丁寧に葉取りをして、りんごの玉を回していらっしゃる。そうやってこのりんごができていることを知れば、食べている味が変わります。それを伝えて、価格だけで選ばれない世界を作ることが私の役目だと思っています。
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