2019年4月5日に開催された、読者向けイベント「日経クロストレンド・ミートアップ」では、エステー執行役エグゼクティブ・クリエイティブディレクターの鹿毛康司氏が、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏とマーケティングの本質やブランド論について議論した。
最初のテーマは「マーケティングの定義」だ。音部氏は「マーケティングを売れる仕組みと考える人は多いが、これは誤りだ」と指摘する。なぜなら単に売りたいだけなら、商品価格を半額にすれば良い。これなら間違いなく商品は売れるだろう。だが、それをマーケティングと呼ぶのは違和感がある。
音部氏は「マーケティングとは市場創造のことである」と言う。消費者の潜在的なニーズに対応する商品を作り出し、新しい市場を創る。それがマーケターに課せられる役割だ。鹿毛氏もこれに同調する。
例えば、万年筆。音部氏の連載でも、引き合いに出された商材だ。万年筆の競合として想定される商品を頭に思い浮かべてほしい。他社の万年筆、高級ボールペンなど、他の筆記具を想像する読者も多いのではなかろうか。もちろん誤りではない。しかし、それは万年筆の持つ価値の一面しか捉えていないことになる。
万年筆は「ギフト」としての需要が高い。この視点で見た場合、贈る相手が男性であればネクタイが競合として挙がるようになる。「こういう思考をできるか否かは、マーケティングワーカーとマーケティングプロフェッショナルを分けるポイントの1つだ( 関連記事)」と鹿毛氏は言う。対談のモデレーターを務めたアジャイルメディア・ネットワーク取締役CMO(最高マーケティング責任者)ブロガーの徳力基彦氏も「俯瞰的な視点を持っていないと、直接的な競合分析にとどまってしまう」と言葉を加える。万年筆は筆記具からギフト商材にすることで、新たな市場創造につながった事例である。これが音部氏の定義するマーケティングだ。
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