未来は、完全にでき上がった形では訪れない。新たに出現した1つか2つのトレンドばかりに集中する組織は、大きな構図を見落とし、その結果、リスクとチャンスを見逃す。では未来のトレンドはどう予測すればいいのか? 断言するが、未来を予測する方法はない。弱いシグナル同士を結び付けるのに専念すべきだ。そのために、複数のトレンドに同時に注目しよう。思考を広げる5つの質問が助けになる。

アイデアとステークホルダーをノードとして図に書き出してみよう(c)shutterstock
アイデアとステークホルダーをノードとして図に書き出してみよう(c)shutterstock

 すぐ目の前のものしか見えない「トンネル・ビジョン」――。地平線上に現れたトレンドを見落とすときに陥るのが、この状態だ。いわゆる認知バイアスのせいで、我々人間はある特定の出来事やトレンドに過度に集中する傾向があり、結局、大きな構図を見逃してしまう。そして、すぐ先の未来に思い切り不意打ちを食らう羽目になる。

 2014年当時のソニー・ピクチャーズエンタテインメントが、まさにそうだった。「世紀のハッキング」と呼ばれた事件の前のことだ。ハッカー集団は、メディアファイル配信のほか、請求、予約などに使われる「スピリット・ワールド」という一種の中枢神経に作用するマルウエアをアップロードすることで、ソニーの社内システムに侵入した。

 だが、ハッカーの世界が何を話題にしているのか調べ、出現したマルウエアや侵入経路を見つけ、ハッカーが企業への侵入を計画していることを理解する代わりに、ソニーの幹部らは事件を一蹴した。経営陣はただ、マルウエアに感染した2つのメールアカウントを無効化しただけだった。

 数カ月後、高度なワイパー型マルウエアで会社は屈服した。ソニーの世界的ネットワークの半分を吹き飛ばし、映画の脚本や給与明細リスト、社会保障番号を盗み、同社のコンピューター3262台、サーバー837台に蓄積されていたすべての情報を消去したのだ。

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