未来学者で『シグナル 未来学者が教える予測の技術』の著者でもあるエイミー・ウェブ氏の連載2回目。顔認証技術は今や世界中で開発が進む。iPhone Xは顔でロック画面を解除できるし、中国では顔で開錠できる車もある。便利な半面、プライバシー侵害や大規模な監視社会につながるリスクもはらむ。米国ではすでに集団訴訟が起こりつつある。我々は「自身の目をしっかり見開き、この新しい世界にアプローチすべきだ」と同氏は言う。

顔認証は新たな“指紋” 取り換えできない顔を使う好機とリスク(画像)

 フェイスプリントは新たな指紋だ。人の顔を構成するすべての特徴、個々人に特有の骨格や肌の色、さらには毛細血管までが、本人を正確に特定するためにスキャンされ、キャプチャーされ、分析されている。指紋と同様、フェイスプリントはあなただけを特定する生体識別子だ。では、ひげを生やしたらどうか。髪の色を変えたり、整形手術を受けたりしたらどうか。そんなことをしても技術の精度の妨げにならない。

きっかけはフェイスブックだった

 米百貨店大手サックス・フィフス・アベニューはすでに、上顧客を追跡するためにフェイスプリントを利用している。米アップルは昨年、新型スマートフォン「iPhone X」を発表した際、鳴り物入りで顔認証システム「Face ID」を披露した。一人ひとり異なる顔の特徴を分析する可視赤外線カメラのスキャンを利用することで、ユーザーがスマホのロックを解除できる仕組みだ。

 米クレジットカード大手マスターカードはセルフィー(自撮り)スキャンを提供しており、カード保有者はスマホを自分の顔にかざして支払える。中国の自動車メーカー、拝騰(バイトン)は、リモコン式のキーではなくフェイスプリントを使って開錠する電気SUV(多目的スポーツ車)を販売している。

 こうした優れた最先端技術は、安全な金融取引やスマートカーの性能向上にとって有望だが、深刻なプライバシー侵害や大規模な監視についての懸念や心配の種をもたらす。すでに、顔認証技術へは米国で訴訟が起きている。

 顔認証技術がまず脚光を浴びたのは2014年、米フェイスブックのソフトウエア「ディープフェイス」がデビューしたときのことだ。同ソフトは97%の精度で写真に写った人を認識する。人間と同程度の正確さだ。

世界中で芽生える高度な顔認識技術

 しかし今、さらに高度な技術が世界中で芽生えている。日本も例外ではない。例えばNECの研究者たちは、人の顔を登録された顔写真と速やかに照合するために、複数の3D(3次元)スキャンを採取している。2020年東京五輪・パラリンピックに参加するすべての人を対象にシステムを配備するとみられている。一方、日本と隣国・中国のコンピューター科学者は、顔の一部さえあれば、たとえ暗がりでも正確に身元を予測できる特徴表現のモデルを開発している。鼻を整形したり、髪形を変えたりしても、技術の精度には影響しない。

 ドイツでは、コンピューター科学者が顔の温度分布(ヒートマップ)を撮影し、マシンビジョンを使ってパターンを認識することで、サーマル(熱的)フェイスプリントが開発されている。この技術は、明かりの量や表情に関係なく、35ミリ秒足らずで顔を正確に特定できる。

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