未来学者としてフューチャー・トゥデイ・インスティテュートを創設し、『シグナル 未来学者が教える予測の技術』の著者であるエイミー・ウェブ氏が、今注目すべき世界のトレンドを伝える連載の第1回。ウェブ氏は中国のAI研究の勢いを指摘し、日本のAI研究の資金不足が続くと、「日本は人材と市場シェアを中国に奪われるだけでなく、兆しとして見えてきた絶大なチャンスも逃す」と指摘する。

中国はAI時代の“OPEC” 不意を突かれる米国、チャンス逃す日本(画像)

 AI(人工知能)の未来を知りたければ、ただ西へ目を向ければいい。日本海の先、中国だ。

 中国はこの2年だけで、AI分野においてとてつもない飛躍を遂げた。2030年までに「世界随一のAIイノベーションセンター」になると約束し、国家として、既にその目標に向かって大きく前進している。中国に本拠を構えるAIスタートアップ企業は今、全世界の投資総額の48%を占めている。4月にはディープラーニングを活用した画像認識技術を手掛ける商湯科技(センスタイム)が評価額45億ドル(約4890億円)とされ、世界で最も価値の高いAIスタートアップになった。中国人研究者が保有するAI関連特許の数は、米国の研究者の5倍にのぼる。

 AIは間違いなく話題の用語だが、技術トレンドではない。AIは、「タビュレーション(表作成による情報処理法)」と「プログラム可能なシステム」に続く、第3のコンピューティング時代だ。近い将来、ゲノム編集や再生可能エネルギー、スマート農業システム、宇宙探査をはじめ、すべての未来技術が何らかの形でAIに触れる。そして目下、中国は世界のリーダーになる構えで、事実上、我々の未来の技術エコシステム(生態系)を構築している。

 AIはコンピューター科学の1部門で、通常なら人間の知能が必要な作業を実行するようコンピューターにプログラムされる。ここには学習、推論、問題解決、言語の理解、状況や環境の認識といったものが含まれる。AIの先駆者であるマービン・ミンスキー氏はよく、「スーツケース用語」とAIを描写した。単純に見えるが実は果てしなく複雑で、ほかの発想、プロセス、問題がたくさん詰まった概念なのだーースーツケースのように。

2030年までに16兆円産業目指す

 中国は学生のAI教育に積極的に取り組んでおり、この2年でAIやゲノム研究、再生可能エネルギーの分野で著しく躍進した。合弁事業や主流でない投資方法を通して、ひっそりと戦略的に、米国の機密技術を取得してきた。こうした投資で中国は、戦術的事業、地政学、軍事の面で、米国のみならず日本、韓国、EU(欧州連合)に対する優位性を持つ。

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