AI(人工知能)が過去のデータに基づいた最適解対応を行う一方で、近年のマーケティングでは、「ファンコミュニティ」や「アンバサダープログラム」のように顧客との心理的な強い絆を重視する施策が注目されている。また、デジタル広告におけるアドフラウド(詐欺的広告)問題やデータの不適切利用問題へも業界全体で取り組みが始まった。共通の背景にあるのが、熱心さや誠実さといったエモーショナルな価値である。

マーケティングテクノロジーに関わるプレーヤーはデータをどのように使うのかをきちんと説明する責任がある
マーケティングテクノロジーに関わるプレーヤーはデータをどのように使うのかをきちんと説明する責任がある

 マーケティング施策の立案と実行には、企業がコントロールできるさまざまな手段を制約の中でどうバランスよく組み合わせて実現していくかというマーケティングミックスの考え方が欠かせない。有名な4P(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション)と呼ばれるものだ。これらの言葉は企業側がすでに持っているリソースから発想してしまうため、顧客側からの視点に置き換えた4C(カスタマーバリュー、コスト、コンビニエンス、コミュニケーション)とセットで考える必要がある。

 かつては、企業がエンドユーザーである消費者のことを知る機会や手法は限られていた。そのために費用と手間をかけて、顧客に関する情報を得るためのマーケティングリサーチが行われた。現在は、行動や意識がデータに記録として残されるようになり、顧客側の視点を共有しやすくなっている。本当の顧客価値や心理はまず行動に表れ、われわれはその行動データを存分に活用できる環境にある。

 同じ性能の商品やメッセージでも受容する人とそうでない人が現れるのは、受け止め方に違いがあるからだ。企業の意図した通りに消費者が受け止めてくれるとも限らない。したがって4Cのように、企業ではなく消費者を主語として考えることが必要となる。

恋愛型競争の時代に必要な考え方

 これを慶応義塾大学名誉教授の嶋口充輝氏は「戦争型競争」から「恋愛型競争」への変化と説明する。

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