経営者にとって、デザインの活用は、自身のビジョンや自社の存在意義を発信し、外部の共感を得るための強力な武器になる。それによってリソースを集め共創を推進することが20世紀型企業から21世紀型企業へと脱皮するための鍵になる。
総括編2:デザイン思考を導入して企業モデルを転換する
前回、拡張・分化するデザインを「広義のデザイン4類型」として、「デザイン思考」「参加型デザイン」「伝統的デザイン」「未来デザイン」の4つに分けて紹介しました。今回は、これらを経営戦略に応用する方法を解説します。
広義のデザイン4類型は、方法論の類型であり、これを経営者視点に言い換えると、目的と主導する部門、進め方がそれぞれ異なります。そこで、これらを経営者の視点から見たチャートにしてみましょう。
1.デザイン思考⇒顧客起点の創造文化づくり
デザイン思考を経営者が活用する場合、最終的に目指すのは顧客体験、いわゆるUX(ユーザーエクスペリエンス)を生み出し続けられる、顧客起点のアジャイルで創造的な組織文化をつくることです。
顧客体験やUXは、商品開発、UI(ユーザーインターフェース)/UX開発や、新規事業開発などR&Dなどの部門に関連します。これらの部門が、新たな顧客体験を創出する場合、まずエスノグラフィーなどデザイン思考の代表的な手法を用いたユーザー理解を起点にします。そして、複数部門の担当者から構成されたチームが、企業の持つ技術シーズを生活者の価値へと翻訳していきます。現時点の生活者の価値を起点とするため、社会実装の期間としては最大3年程度が適しています。
米IBMや独SAPに代表されるプラットフォーム型企業が外部企業と協働するに当たり共通言語・共通プロセスとして、デザイン思考を全社に導入するのは、アジャイルな創造的組織文化をつくる方向に進化したものです。
ぺんてる(「日経デザイン」2018年2月号、3月号参照)やNHKエデュケーショナル(同2017年10月号、11月号参照)のように、発想力を持っている企画担当者によって、顧客起点のアジャイルで創造的な組織文化を醸成していく例がこれに当たります。典型的には、ユーザー理解や共創から始まり、プロトタイプを検証しながら、アジャイル開発へとつなげていきます。こうした組織文化を確立するまでをゴールと考えると長期的な取り組みが必要です。IBMもSAPも5~10年近くプロジェクトを継続し、創造文化の土壌をつくってきたのです。
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