デザイン思考は、イノベーションの手法として経営の文化になりつつある。これまで紹介してきたケーススタディを概観し、デザイン思考がどのように進化してきたかを振り返るとともに、その未来を展望する。

総括編1:拡張・分化するデザイン思考

佐宗邦威●BIOTOPE代表(写真/新関雅士)
佐宗邦威●BIOTOPE代表(写真/新関雅士)

 「日経デザイン」2017年7月号から始まった本連載は、共創型戦略デザインファームのBIOTOPEが、デザイン思考を経営やビジネスの現場で活用・応用した11社の事例を1年半にわたり解説してきました。今回から、これらのケーススタディを振り返り、得られた知見を解説する「総括編」を始めます。総括編の第1回では、活用の広がるデザイン思考の地図と現在の座標を示し、デザイン思考が今後進化する方向を考えます。

 私が、デザイン思考と出合ったのは、03年に読んだ『発想する会社!』(早川書房)を読んだときです。著者の1人は、米国のデザインファームIDEOのゼネラルマネジャー、トム・ケリー氏です。

 その後、08年にデザインコンサルティングファームの起業を試みたことがあります。しかし、当時は企業のイノベーション活動は社内で行われ、コンサルティング会社と組んで新規事業を企画する企業はほとんどなく、事業化は失敗しました。

 デザイン思考を一種のイノベーション技術として考えれば、現在はアーリーアダプターが導入するフェーズであり、今後本格的に普及するフェーズに移行する時期といえると思います。

 一方、欧米のビジネス現場では、本格的な普及フェーズに入っています。実際に、欧米ではデザイン思考を導入している企業が、インテルやマイクロソフトのようなIT会社だけでなく、IBMやGEなどの従来型の大企業および英国やオーストラリアなどの英連邦や北欧の国々を中心に政府系機関や自治体にも広がっています。

 国内では、企業内に創造性を育むための「魔法の杖」としてデザイン思考を導入したものの、期待したほどの成果が得られず失望する人が増えていると聞きます。しかし、私の経験では、デザイン思考はチームの協働による創造の型を学ぶ入り口のようなものです。柔道で型を覚えただけでは勝てないのと同じで、デザイン思考を武器にするには、業種や職種の用途に合わせて応用する必要があります。