人工流れ星の実証実験を発表し、国際的にも注目される宇宙ベンチャー企業のALE(エール、東京・港)。その裏で、周囲の期待と自社が目指す方向との間にギャップがあった。デザイン思考により、自社のミッションとビジョン、バリューを見直してギャップを埋めるとともに、組織力を強化した。

将来つくり出したい「宇宙の文化圏」を具体化したビジョンマップ。随時更新する
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今回のテーマ:企業のDNAをデザインする

インタビュー編

左:岡島礼奈●ALE代表取締役 右:佐宗邦威●BIOTOPE代表
左:岡島礼奈●ALE代表取締役 右:佐宗邦威●BIOTOPE代表

佐宗:2019年1月18日、国産小型ロケット「イプシロン」4号機の打ち上げが成功しましたね。

岡島:今回の打ち上げは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による「革新的衛星技術実証プログラム」の最初の実証機会となります。公募により、民間企業や大学など13の研究機関が選ばれました。その中の1社として、世界初の人工衛星による人工流れ星の実証実験に取り組みます。

佐宗:その実験が、20年春に広島の上空で行われるのですね。

岡島:はい。人工流れ星を観測できる地域は広島を中心とした200キロメートル圏内です。今回の実証実験では、広島を中心にメイン会場をいくつか設置して、地上の音響や照明とコラボレーションするなど、観測場所ごとに異なる演出を楽しめる新しいエンターテインメント体験を創出する計画です。

佐宗:それでは、BIOTOPEとの取り組みを振り返りましょうか。

岡島:最初にお会いしたのは18年の3月でしたね。当時はALEの代表として、会社の経営に悩んでいました。小さな会社ならではのスピードとフラットな組織を保ったまま、社員全員が一体化して自由に働ける環境を整えたいと考えていました。

 そのとき、自律的な組織論の書籍として話題だった『ティール組織』(英治出版)を購入しました。内容に感銘を受け、書籍の帯に推薦文を書いていた佐宗さんに連絡しました。

佐宗:それをきっかけに、ALEの企業としてのDNAのデザインをお手伝いすることになりました。

岡島:佐宗さんから組織づくりの基本として、コアになる考えを組織内で共有することが大事だと教わったのですが、コアの考えをうまく言語化できずにいました。それでミッション、ビジョン、バリューを見直すことにしました。

佐宗:順風満帆の印象だった岡島さんに、悩みがあることが意外でした。

岡島:メディアへの露出が増えて、企業の評判は高まりましたが、社内を振り返ると自分の思うように動いていないことが多いと感じていました。

佐宗:当時、岡島さんはどのようなスタイルでマネジメントしていましたか。

岡島:自分ができないから他人にお願いするスタイルです。とにかく、できる人に頼む、できる人を連れてくるという考えでした。

佐宗:社員が増えて、新たな悩みに直面していた時期ですね。

岡島:スピードアップと組織内の情報共有が課題でした。これまでは個人の力で何とか回してきましたが、さらなる発展のためにはチームで成果を出すことが不可欠です。会社を有機的な組織として動かしていくにはどうすればいいのか、いつも考えていました。

佐宗:他に悩みはありましたか。

岡島:人工流れ星で注目されたのが、エンタメの側面に偏っていたことです。それだけでなく、事業を通して科学の発展に寄与したいと考えていました。そうした側面にもフォーカスしてほしいという気持ちがありました。

佐宗:18年4月に岡島さんと話し合い、翌月にALEの株主や天文学者などを相手に、この先100年で未来がどう変わるのかというテーマで、岡島さんが“妄想”を語る場を設けました。

岡島:起業以来、日々の業務に追われて遠い未来を見つめる機会がなくなっていました。でも、そういう時間をつくると、自分が現在どこにいるのかが分かります。俯瞰(ふかん)で見ることの重要性を改めて感じました。

佐宗:このとき、宇宙を舞台にしたエンタメの先に何があるかを議論しました。さまざまな意見が飛び交う中、「好奇心」というキーワードにたどり着き、それが宇宙への扉を開き、人類に進化をもたらすという結論に至りました。

岡島:当時はエンタメの企業として語られることが多く、会社の見られ方とその根底にある部分がズレていると感じていました。でも、本当にやりたいのは、科学の側面です。今回の一連の作業でそれを言語化できたことは本当に大きかったです。