IoTやAI(人工知能)などのデジタルテクノロジーの急速な進化によって、縦割り型の組織や供給者視点の発想が時代遅れになりつつある。総合商社の丸紅は、デザイン思考によるボトムアップ型変革を進めている。
今回のテーマ:経営変革をボトムアップで加速させる戦略デザイン
インタビュー編
(写真/新関雅士)
早坂:2016年、テクノロジーの進化に対応するために会社として何ができるかを部門横断的に検討せよというミッションを受け、IoT・ビッグデータ推進委員会を立ち上げました。そこからBIOTOPEさんとの半年間のプロジェクトがスタートしました。
小林:最初にお話を伺ったとき、複数の部署を巻き込んだ全社横断の取り組みは、商社らしくないと感じました。
早坂:新しい技術が産業の垣根を壊しながら他の領域のビジネスモデルを駆逐し、顧客ニーズが変化しています。そうした世の中は、商品を軸にした縦割り型の組織で成長してきた弊社のような企業にとって脅威です。旧来のやり方ではいつか立ちいかなくなります。
まずは部署間で情報を共有し、自社の強みを再認識することが重要です。そのうえで顧客と向き合い、ソリューションを考えるマインドセットに切り替える必要が出てきました。
佐宗:プロジェクト開始当時は、どのような課題に直面していたのですか。
早坂:組織横断といっても、いきなりは難しいと思いました。まずは時代の変化を認識し、危機感を共有する場が必要という課題意識がありました。
小林:その際、戦略コンサルティング会社ではなく、弊社のようなデザインファームに声を掛けたのはなぜですか。
早坂:企業が生まれ変わるには、ショック療法的な意識改革が必要です。戦略コンサルのプロセスやアウトプットはある程度想像できます。一方、御社となら劇的な意識改革ができるのではと思いました。実際、プロジェクトを開始して間もなく、元楽天の安武弘晃氏にご講演いただきました。そのときの参加者のアンケートには「ハンマーで頭をたたかれたような衝撃」というコメントもありました。
戦略コンサルはロジカルに整理、提案するスタイル。それに対して、御社の提案書には「内発的動機を大事に」とありました。社員が「楽しい」「動かなきゃ」というマインドセットに変わるには内発的動機が重要だと考えていたので、御社とご一緒したのは自然な流れでした。
佐宗:そのとき、デザイン思考を活用するという考えはありましたか。
早坂:これまでの商社のビジネスのやり方は供給者の視点が強かったと思います。つまり良い商品をお客様に届けるというマインドセットでした。それを、需要から遡るアプローチに切り替える必要がありました。それがデザイン思考に通ずると思っていました。
小林:プロジェクト前半は、今起こっている変化を共有することからスタートし、後半はアイデアを具体的な事業案に落とし込むプロトタイピングを行いました。
早坂:プロジェクトの参加者は、まず、外部から招いたゲストの話から変化を実感しました。私は、時代を先取りしているのは商社パーソンだと思っていました。しかしゲストの話を聞くほどに、今の最先端はデジタル業界の人だと痛感しました。参加者の多くが同感だったようです。
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