P&Gで17年間ブランドマネジメントなどを経験し、資生堂ジャパンでCMO(最高マーケティング責任者)も務めた音部大輔氏は「いい人材を育てるには仕事に必要なスキルをリストアップし、目標を設定して計測すること。そのスキルセットは会社やブランドのパーパス(存在意義)から考えるとよい」と言います。

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 2020年6月9、10日にオンライン開催となった「Advertising Week JAPAC(AWJAPAC)」は総視聴者数4万5000人を超えました。その中で、インフォバーンの田中準也COO(最高執行責任者)と「パーパスに基づくリモートワーク時代の人材育成」をテーマに対談しました。終了後にさまざまな反響をいただきましたので、ここでその内容をお届けします。

 前編「音部氏がリモートワーク下の人材育成に警鐘 OJTが完全な放置に」に続き、後編となる今回は「結果を出しているマーケターがいい人材を育てられるとは限らない」というテーマから始めたいと思います。

2020年6月9、10日にオンライン開催となった「Advertising Week JAPAC(AWJAPAC)」で、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏(右)とインフォバーンの田中準也COO(左)が「パーパスに基づくリモートワーク時代の人材育成」をテーマに対談を行った
2020年6月9、10日にオンライン開催となった「Advertising Week JAPAC(AWJAPAC)」で、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏(右)とインフォバーンの田中準也COO(左)が「パーパスに基づくリモートワーク時代の人材育成」をテーマに対談を行った

田中準也氏(以下、田中) 「結果を出しているマーケターがいい人材を育てられるとは限らない」とすると、マーケターやクリエイターのみなさんは、どうしたらよいですか。

音部大輔氏(以下、音部) もちろんプロフェッショナルなので、結果はとっても大事なんですよ。いいマーケター、いいクリエイター=結果を出した人とする組織は少なくありません。「この組織でいいマーケターはどの人ですか?」「あの人すごいですよ。ブランドを2年連続伸ばしています」「どの方がいいクリエイターですか?」「あの方は賞をいっぱいとっています」といった具合です。

 確かに結果はその人が優秀か否かを判別するという意味で、とても使いやすい基準です。ただ、何が具合悪いかというと、育成には使いにくいんですよね。

 結果を出した人をいいマーケターと呼ぶとします。では、いいマーケターをどうやってつくるかというと、いい結果を出してもらえばいいということになる。いやいや、いい結果を出すためにいいマーケターが必要なんですよ、と。結果が原因になっている感じがあって、いいマーケターを選び抜くためにはこの方法でいいんだけれど、そのいいマーケターをつくるのにはあまり役に立たない。だから、ここに1つ、大きな改善すべき点があります。

関連記事:
前編:音部氏がリモートワーク下の人材育成に警鐘 OJTが完全な放置に 
後編:結果を出しているマーケターがいい人材を育てられるとは限らない ←今回はココ

明示の仕方1:必要なスキルをリストアップし、目標を設定し、計測

田中 定義すると同時に必要なスキルセット、あるいは育成プロセスの可視化と共有化も必要だと感じました。明示の仕方がすごく大事だと思うんですよね。今回、明示の仕方を3つご用意いただきました。

 まず、1つ目。仕事に必要なスキルをリストアップし、目標を設定して計測する。

音部 田中さんがおっしゃったように、リストを作り、計測できるようにし、その獲得のプロセスを明示して、みんなに共有する。まさに、それをやらなくてはいけないと思うのです。最初に出すべきことは、スキルリストをちゃんと作ることです。いいマーケター、いいクリエイティブ、いいアカウントを示すときに、どういうスキルが必要か。

 これは作業を追いかけていくと、見えてくるんじゃないかと思います。単一のスキルだけではなく、複数のスキルが複雑に融合しているかもしれません。

 例えば、マーケターが新商品を開発して導入する、ということを考えると、最初に消費者理解が必要でしょう。ベネフィットを開発し、マーケティング戦略をつくって、価格を決めたりパッケージを決めたり製品を決めたり、いろいろなことをやっていきます。ちょっと考えるだけでも、たくさんの仕事があると思います。加えて、こうしたそれぞれのオペレーションを統合・整理し、俯瞰(ふかん)するような全体設計のスキルもきっと必要になってきますね。

 それぞれに「この人はスキルを獲得したかな」「まだこれからかな」「中ぐらいまできたかな」と計測できるといいです。中には計測しにくいものがあったりするんですね。

 例えば、消費者調査です。今まで一緒に働いた方々の中で、消費者調査がすごく上手な人と、まだこれから上手になる段階の人がいたとします。違いは分かるのだけれど、なぜその違いが出てくるのかが分かりにくいかもしれません。

 リサーチ会社であれば細かく計測する方法があるのかもしれませんが、マーケターやアカウントエグゼクティブにとっての消費者理解スキルであれば、経験量で疑似的に測るといった方法もあるかもしれません。リサーチを1回もやったことないか、もうすでに5回やっているか、むしろ毎年5回やっているか。こうした目の前の仕事からスキルを書き出していくような方法でリストアップできるスキルは、どっちかというとオペレーションや作業に関するスキルだと思います。

田中 リモートワークによって移動時間がなくなった分、オンラインミーティングばかりやっているマネジャーは、こういう時代だからこそ、時間をしっかりとってまずこのリストアップはしたほうがよさそうですね。ただそれだけでは、なんかうまくいかなさそうな感じもします。核心に入ってまいりますけれども、「パーパスの実現を促すスキルのリストアップ」を解説いただけますか。

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