P&Gで17年間ブランドマネジメントなどを経験し、資生堂ジャパンでCMO(最高マーケティング責任者)も務めた音部大輔氏は「オフィスでの非公式なやりとりに助けられていた部分がなくなってしまうと、OJT風の放置がそのまま完全な放置になりかねない」と警鐘を鳴らす。
2020年6月9、10日にオンライン開催となった「Advertising Week JAPAC(AWJAPAC)」は総視聴者数4万5000人を超えました。その中で、インフォバーンの田中準也COO(最高執行責任者)と「パーパスに基づくリモートワーク時代の人材育成」をテーマに対談しました。終了後にさまざまな反響をいただきましたので、ここでその内容をお届けしたいと思います。
田中準也氏(以下、田中) 音部さん、本セッションのタイトル、「パーパスに基づくリモートワーク時代の人材育成」。なぜこのテーマを選ばれたのか教えていただけますか?
音部大輔氏(以下、音部) 在宅勤務が長くなってきて、周りからも「リモートワークでも問題ないね」なんて話を聞くようになってきました。実際、Cクラス(役員)だったりディレクターだったり、といった方々は多分リモートワークでもそれほどパフォーマンスを落とすこともなく仕事ができているんじゃないかと思います。
それは皆さんがすでに、どうすればビジネスが回っていくか、どうすれば自分が強くなれるか、というのを知っているからです。これから社会が直面していくと思われる問題は、新人やまだ一人前になっていないプロフェッショナルをどう育てていくか、ということではなかろうかと思います。それで今回はこのテーマがいいのではないかと考えました。
後編:結果を出しているマーケターがいい人材を育てられるとは限らない
リモートワークの強制的な開始と作業上の順応
田中 働き方の変化に関しては、新型コロナの影響で、リモートワークが強制的に、日本のみならずですけれども、開始しましたね。これはまさしく、働き方のDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に加速したとも言えるのですけれど、音部さん、いかがお考えですか。
音部 3月あたりはモタモタした部分もあったかもしれませんけれども、それぞれに慣れたと思うんですよね。オペレーションは、多分うまく進んでいくでしょう。撮影とか編集といった、特定の場所にいなきゃいけない仕事に関しては、完全にデジタライズはできないし、自宅からというわけにはいかない部分もまだあると思います。
それでもマーケティングだったり、ブランドマネジメントだったり、コミュニケーションのプランニングという側面に関して言うと、随分前からデジタル化されていたので、通信環境があってコンピューターがあれば、なんとでもなります。それほど大きな違和感はなくなってきているのではないかなと思います。実際、画面越しの意見のやりとりとか、ミーティングというのも、多くの人がすでに慣れつつあります。
田中 ニューノーマル、新しい日常に慣れていく、ということですね。
音部 作業はすでにできるようになりましたよという段階かな、と思います。
田中 “作業は”というところがポイントになりそうですね。
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