新型コロナウイルス感染拡大の収束が見えない中、ブランド戦略を担うマーケターが2021年以降に向けて今やっておくべきことは何か。P&Gで17年間ブランドマネジメントなどを経験し、資生堂ジャパンでCMO(最高マーケティング責任者)も務めた音部大輔氏が提言する。
緊急事態宣言下の活動を余儀なくされるのがいつまで続くのか、まだ分かりません。コロナの霧は、マーケティングや営業の現場を支える担当者から、事業を預かるリーダーまで、それぞれの立場に深く立ち込めています。とはいえ、20年は進んでいきますし、すぐに21年が始まります。現状の先にある日本の未来の状況は見通しにくいですが、組織あるいはマーケティング部門内で期待されそうなことなら想像しやすいかもしれません。
仮に20年末を想像したときに、われわれが「半年前にあれをやっておいてよかった」と考えそうなことをしておくのは、今準備しておくべき正解の一つだと思います。何をしたらいいのかよく分からないときには、未来の自分に聞くのは方法の1つです。
●マーケターは消費者理解の「地形図」を書き直すべし
●マーケティングトップは「資源の変化」を把握し、「目的」を明確化せよ(5月13日公開予定)
マイナスを21年に取り返すなら、秋からでは遅い
20年後半あたりには、マネジメントからは次のように指示されているのではなかろうかと想像します。
「20年は仕方がなかった。このような大厄災はだれにも想像できなかったし、ビル・ゲイツが18年に(米国発のイベント)「TED」で感染症の脅威を語っていたとしても、現実的な危機として準備するのは無理だった。
春定番の新商品の発売は2月の時点ではもはや止めようもなく、残念ながら結果は期待通りではなかった。物理的に店頭のフォローアップをしにくかったし、イベントなども止めざるを得なかった。広告を減らしたブランドもある。出張制限がかかって、営業現場との連携が不十分なところもあった。
同じ状況になるのを防ぐために、秋定番の新商品導入は見合わせた。既存ブランドの活動や、イベントや店頭のフォローアップなど十分にできる可能性が低かったからだ。せっかく何年もかけて準備をしてきた新商品を失敗するわけにはいかない。半年遅らせてでも、万全を期すべきだ。だから、秋の新商品は延期し、21年春の新商品として投入する。それに、21年こそ五輪イヤーとなるのだから、正しい判断になるだろう。
20年のダメージは、21年に確実に取り返したい。20年が19年比でプラス3%成長したかったところ、マイナス10%になってしまった。21年に3%の持続的な成長ペースを取り返すとなると、21年は20年比でプラス18%成長する必要がある」
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー