マーケティング組織の持続的な成長のためには、次世代の育成は極めて重要な課題である。ひとかどのプロフェッショナルになるには1万時間を投入する必要があるともいわれるが、競争力のある道具立てを整えることで時間をかけずとも途上層の貢献を最大化できる。

ミキサーが野菜の栄養価を取りやすくするように、人材育成にも優秀な道具が有用だ (C)Syda Productions/Shutterstock
ミキサーが野菜の栄養価を取りやすくするように、人材育成にも優秀な道具が有用だ (C)Syda Productions/Shutterstock

 うまくマネジメントすることができれば、ブランドは通常のアサインメントのサイクルは言うに及ばず、全キャリアや人間の寿命よりも長く存続できる可能性を持っている。であれば、ブランドチームの世代交代が起きることを前提とした組織管理をする必要がある。これはブランドマネジメント制に限った話ではない。マーケティング組織の持続的な成長のためには、次世代の育成は極めて重要な課題である。

組織の力で個人を成長させる

 育成に際して、組織はどのような貢献をすべきであろう。強くなることは広い意味での知識を中心とした資源をたくさん獲得することであるが、その資源の中に組織が個人を成長させる要素が含まれているはずだ。そういった要素を理解するために、強い組織について、少し議論を進めてみよう。

 一般的に、組織の成員を貢献度別に並べると正規分布を示す。その真ん中を平均的な人材とすると、上位1/3を優秀な人材と呼び、下位1/3を発展途上の人材と呼ぶことにする。自社の発展途上層による貢献が競合の平均層がもたらす貢献と互角であるならば、それは優れた組織であると言えるだろう。同様に、平均が他社の優秀層と互角であれば強力な競争優位を生みそうだ。何が起きれば、これを実現できるだろう。

 生まれつき優秀という天才的な人々も少しだけ存在するかもしれないが、大多数の人材の貢献度合いには後天的なトレーニングや学習が大きく寄与すると考えるべきだ。例示するために便宜的に途上層として1年目、平均層として5年目、そして優秀層として10年目と想像してみよう。1年目と5年目、5年目と10年目を分けるものは何か。違いは年数に起因する経験や知識の蓄積である。10年目がようやく知ることは、最初の1年で学ぶには機会も少なく、難度も高過ぎる。

1万時間の法則とは?

 ここでの議論は年功序列を支持するものではない。重要なのは年功ではなく、年数に依存する経験値の蓄積量である。無為に過ごした10年に大した意味はないが、奮励努力した10年で得られるものには大きな価値があるはずだ。重要なのは年数そのものではなく、その間に獲得した経験値であり、知識である。ひとかどのプロフェッショナルになるには1万時間投入する必要がある、という法則がある。たとえマーケティング部門に所属していても、朝から晩までマーケティングに時間を使えるわけではない。メールを読んだり、定例の会議に出たりする必要もあるだろう。「その他」の作業はとても多いものだ。

 そのような環境下でも、仮に毎日3時間をマーケティング業務に使えたとする。1年に250日働くと年間で750時間だ。加えて週に合計5時間ほどマーケティングについて勉強するならばプラス250時間。これで年間に1000時間をマーケティングに投入することになる。そうした生活を10年続けてようやく1万時間を超える。もし毎日6時間使うことができれば、6年半ほどで1万時間に達する。

 いずれにしても、技能を習得するというのは大変なことだが、1日の勤務の中でマーケティングに投入できる時間を増やしたり、単位時間当たりの経験値習得の密度を高めたりすることで短い年数で成長することは可能だと思われる。

 これは必ずしも1万時間を超えないと使えない、という意味ではない。プロフェッショナルとしての1つの目安を示しただけだ。1年目でも著しい貢献をもたらすマーケターは存在するので、念のため。

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