「後進の育成ができなければ自らも昇進できない」といった規律を維持できる組織もあれば、希少な人材育成者をうまく活用できない企業もある。自律的な組織成長を実現するには、成長の本質を理解する必要がある。何に着目し、どのような手を打てばいいだろうか。

組織構築とは、知識を運用する仕組みづくりである (C)urfin/Shutterstock
組織構築とは、知識を運用する仕組みづくりである (C)urfin/Shutterstock

 組織の成長が重要だと唱えるリーダーは多い。同時に、知識や育成をないがしろにする組織がとても多いのは残念なことだ。リーダーが組織成長の重要性を本質的には理解できていなかったり、その方法を知らなかったりすると、表面的に「組織の風通しが悪いから“さん付け運動”をしよう」とか、「若手を元気づけるために若者を起用しよう」と掛け声をかける。

 もちろんこれらも組織を活性化させるいい施策であるけれど、根本治療ではない。なぜなら、これらが影響を与えるのは成員の意識と動機だけだからだ。やる気や情熱がなければ事はなせないが、やる気と情熱だけで苦境の克服を図るのは前時代的だ。組織が人数以上の力を発揮するには、個々人が相互に作用し合える仕組みが必要だ。

成長とは何か

 成長とは何か、というのは極めて単純で簡素な質問であるけれど、質問と同程度に単純で簡潔には答えられないかもしれない。いろいろな考え方があるだろうし、環境や組織によっても差があると想像される。さまざまな組織の成長をひとくくりで記述するのであれば、それは「昨日できなかったことが、明日できること」であると考える。努力そのものの話ではないし、むやみに精神論に頼るものでもない。昨日できなかったことが明日できれば、これは成⻑だ。能力のこともあればやる気のこともあるかもしれないが、いずれにせよポジティブな変化であり、成⻑と呼んでいいものだ。逆に、もしできることに差がないのであれば、それは成⻑ではない。

なぜ明日になるとできるのか

 では、なぜ昨日できなかったことが明日になるとできるようになるのだろう。一言で言えば、「資源が増えたから」である。正しいやり方が分かったか、支援を得られる方法を知ったのだろう。誰かに秘訣を教えてもらったのかもしれないし、自身や他者の失敗や成功からラーニングを得たかもしれない。

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