強豪ひしめく髪のダメージケア用品市場。そんな中、「母と娘」をターゲットにした新ブランドをクラシエホームプロダクツが投入し、好調に推移している。テレビCMでは、機能性を一切打ち出さず、シャンプーをするシーンすら一瞬映るだけ。定石に反するマーケティングの狙いとは。
髪のダメージケア用品といえば、大人の女性をターゲットにするのが定石。そんな中、「母と娘で一緒に使う」という異例のコンセプトを打ち出して好調なのが、クラシエホームプロダクツの「マー&ミー ラッテ」だ。ドラッグストアのPOSデータによれば、2019年10月のシャンプーのシェア上昇率で1位を記録し、成長を続ける(True Data調べ)。
機能性で「忙しい親」を助ける
開発に当たり、母と娘でそれぞれ髪の質やダメージの表れ方が異なる点に着目。2種類のミルクプロテインを配合し、対応した。さらに、「泡立ちの良さだけでなく、すすぎやすさにも気を配った」(ヘアケアマーケティング部の綿引志帆氏)ことも、忙しい親の心を捉えた理由だ。
興味深いのは、テレビCMなどで機能性を一切訴求していないこと。「母と娘がおそろいの髪形、服で外出やヨガ、ジョギングを満喫する姿を通じ、一緒の時間や体験を共有する楽しさを表現した」(宣伝・販促部の駒村友紀氏)。世界観のアピールに徹し、共感を生んだのだ。
体験イベント連発で話題を醸成
また、ヘアケア用品の場合、実際に髪を洗うといった販促イベントを行うことは難しく、体験価値を訴求しづらいのが難点だった。そこで仕掛けたのが、美容師が母と娘に同じヘアアレンジを施す体験型イベント。18年9月の発売直後から全国の大型ショッピングモールなどで多数実施し話題に。SNSでも拡散された。徹底した世界観の訴求が濃いファンを生む原動力となっている。