拡大を続けるエナジードリンク市場。世界シェアトップは「レッドブル」だが、国内のドラッグストアやスーパーマーケットのPOSデータで見ると、「モンスターエナジー」(アサヒ飲料)が大差でレッドブルをリードする(True Data調べ)。その秘密は、若者への集中マーケティングだった。
絶好調のモンスターエナジーだが、「特に2018年から好調」と、True Dataのデータアナリスト・原菜穂子氏は話す。その秘密は、若者を集中的に狙った、非効率ともいえるマーケティングだ。
レッドブルがテレビCMを連発するなか、「テレビCMなどのマス広告は一切打たない」(モンスターエナジー・ジャパンの青山哲氏)。代わりに行うのが、徹底したゲリラサンプリング。東名阪や福岡の大学が集まる駅周辺で、道行く人に商品を直接手渡す。新商品発売時に行う企業は多いが、モンスターは365日繰り返す。
“神出鬼没”の配布 365日サンプリングで認知拡大
国内に数台あるロゴ付きのシボレー製トラックに商品を積み込み、東名阪と福岡の4都市で毎日場所を変えてサンプリング。配布エリアは大学近くの駅周辺などに限定し、配布後は風のように去る。神出鬼没のダイレクトマーケティングで地道に認知を高めた。

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トロピカルなピンク缶が大ブレイク
さらに19年4月には、従来エナジードリンクを手に取っていなかった女性層を狙い、ピンク色の缶が特徴の「モンスター パイプラインパンチ」を投入。日本では珍しいトロピカル風味が受け、生産が追い付かずに5月に終売となるほどブレイクし、パーティーなど飲用シーンを広げた。同時期に、東京の渋谷駅や大阪の阪急梅田駅(現・大阪梅田駅)などで、構内をロゴで埋め尽くす“大規模多発的駅ジャック”を敢行。サンプリングも大幅拡充し、売り上げが急伸した。7月に日本コカ・コーラが「コカ・コーラ エナジー」で殴り込みをかけてきたが、モンスターの売り上げにはほぼ影響が無い。地道にブランド力を磨き、“浮気をしない”顧客を囲い込めていることの証左だろう。