日本航空Web販売部に所属し、月間2億ページビュー(PV)にも上るJALウェブサイトにおいて、さまざまなデータの分析やウェブの施策に取り組んできた渋谷直正氏。最近、「アップリフトモデリング」というデータ分析の取り組みを始めたという。
現在、Web販売部1to1マーケティンググループに所属されています。どのようなお仕事をされているのですか。
渋谷直正氏(以下、渋谷) Web販売部に着任してちょうど10年になります。この部署でやっている仕事は、ウェブ周りの分析とリコメンデーション、メールマガジンの発行、ウェブ宣伝などです。効率の高いオペレーションを作ることで、費用対効果を上げて収益を上げるといったミッションを負っています。
PCサイトは1日およそ50万ユニークユーザーのお客さまに見ていただいています。月間2億PVぐらいのボリュームです。売り上げはPCサイトの方が多いですが、今はスマホの売り上げもかなり伸びています。
ウェブサイトと言っても、お客さまを集めて、売り場へ来てもらって実際に見て買っていただくというところは普通のお店と同じです。お店の売り上げを増やすには、お客さまが何を望んでいるのかを理解しなければなりません。問題は、そのお客さまが何も言わずにお店に来ることです。そうしたお客さまのご要望が何かを知るために我々は分析しています。ものを言わないお客さまのニーズを把握して、ウェブサイトで壮大な実験をして、トライアルをして、チューニングをして、成果を上げる。この繰り返しが、私の仕事になります。
1日に50万ユーザーも来てくださっていると、ほんのちょっとコンバージョンを上げるだけでも、すごく効果があります。1日にコンバージョンする数をわずか15件上げるだけで、年間数億円も売り上げが伸びるのです。ウェブ宣伝でお金をかけて集客するというのもありなんですけれど、コンバージョン率をちょっと上げるだけでも、実はバカにできないんですね。
10年前と比べ、データ分析は圧倒的に楽に
Web販売部の仕事を始めてもう10年もたったのですね。現在のお仕事で10年前と変わったところはどんなところでしょうか。
渋谷 この世界は次から次へと新しい施策やツールが入ってきて、どんどん技術が進歩するので、10年なんてあっという間でしたね。
10年前はデータをためるだけでもひと苦労でした。今でこそ、「Googleアナリティクス」などで解析するなんて当たり前になってきましたけれど、当時、生データをサーバーに置いておくだけでも、ものすごくコストがかかりました。それをかなり苦労してオンプレ(自社サーバー)の環境で作っていましたからね。今だと、クラウドで簡単にできるじゃないですか。ストレージも増えて、処理能力も速くなって、10年前と比較すると圧倒的に楽になっていますね。
それに伴って、施策の精度もどんどん上がっていく。
渋谷 そうですね。最初の頃は、手作業でのオペレーションにかなり手間をかけていましたが、最近はその辺のフェーズが変わってきて、機械学習などでオペレーションが自動化してきました。そうなると、より考える部分が重要になってきています。今まではクラスターを作って、それをどう回すかがかなり重要だったんですけれど、その部分が自動化されてきているので、どういうクラスターを作るかというところに我々の興味はシフトしてきていますね。
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