JVCケンウッド・ビクターエンタテインメントでグループデジタル戦略を統括する今井一成氏。サザンオールスターズのプロモーションなどを担当してきた今井氏が、音楽配信の部署に異動したのは2008年。以来、日本のデジタル音楽市場をけん引し、さまざまな挑戦を続けてきた。サブスクリプションサービスが本格化する今、これからの戦略について聞いた。

かつては「スピードスターレコーズ」に在籍し、ロックをはじめサザンオールスターズのプロモーションを担当されていた今井さんですが、現在はデジタルビジネスを率いるお立場になられています。デジタルに関わったのはいつからですか?
今井一成氏(以下、今井)08年、ちょうど10年前にiPhoneが日本で発売され、スマートフォンに注目が集まった頃です。当時、まだ日本ではガラケー(フィーチャーフォン)での「着うた」の全盛期でした。デジタル配信に関わったのは、自分が音楽業界であと何年も働くことを考えたら、新しい時代に合うスキルを身に付けていかなくてはいけないと思ったからです。ありがたいことに、会社の経営幹部も理解してくれて、デジタルをビジネスにしていくための部署を作らせてもらいました。

しかし当時、CDはまだ売れていたし、アーティストもCDを出すことにステータスを感じていた時代でした。初めの数年は、社内でもデジタル配信はCDを脅かす厄介者扱い。配信日をCDリリースの後にしてほしいとか、悔しい思いをしたこともありましたね。 デジタルへの手応えを感じたのは、10年にリリースした斉藤和義のシングル『ずっと好きだった』。当時、着うたや「着うたフル」でもJ-POPは好調でしたが、ロックは難しいといわれていたんです。でも、その固定観念を打ち破って、『ずっと好きだった』はiTunes、レコチョクなどの配信サービスでも軒並み1位を獲得し、ロングヒットとなりました。ドラマ『家政婦のミタ』の主題歌だった11年のシングル『やさしくなりたい』も総ダウンロード数は100万超。デジタルでも“仕掛けて売る”形が作れるという確信につながった出来事でした。
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