すかいらーくホールディングス取締役常務執行役員マーケティング本部の和田千弘マネージングディレクターと、スマートニュース執行役員マーケティング担当の西口一希氏は、企業でCMO(最高マーケティング責任者)としての役割を担う。CEO(最高経営責任者)との違いなどについて激論を交わした。

すかいらーくホールディングス取締役常務執行役員和田千弘マーケティング本部マネージングディレクター(左)と、スマートニュース執行役員マーケティング担当の西口一希氏(右)
すかいらーくホールディングス取締役常務執行役員和田千弘マーケティング本部マネージングディレクター(左)と、スマートニュース執行役員マーケティング担当の西口一希氏(右)

西口一希氏(以下、西口) 私はCEOはカルチャーとか、会社をまとめる役割。実際のオペレーションで売り上げ、利益をあげるのはCMOだと考えています。一方で、CEOから人事、総務業務を引いて、ビジネスに特化したのがCMOという意見もある。2つの役職の間にどんな違いがあると思いますか。

和田千弘氏(以下、和田) 店はでさまざま問題が起こります。オペレーション上の課題などまでは対応しないので、人事や総務という仕事は担当していません。ですが、CMOで成果を出せるのは(インターブランドジャパンやシャディで)CEOをやった経験が生きています。どういう情報があれば、確信を持った意思決定をして、組織に指示を出せるかが分かるようになりました。

西口 CEOとCMOには資質の差があり、人間関係で人を束ねることが得意な人はCEO、いかにビジネスをして売り上げを上げるかにこだわりのある人はCMOです。ただ、そこは意外と摩擦が起こりがち。売り上げを優先すると働き方に課題が生まれることもあるからです。

和田 当然配分を考えないといけませんが、私はCTO(最高技術責任者)を兼ねています。CTOはある意味、会社の神経を司る存在。会社のシステムを変えると、劇的にオペレーションの改善が見込めるからです。ですから、CTOの役割も兼ねることは非常に重要です。

店舗オペレーションとの連動が重要

 マーケティングテクノロジーの話だけではなくて、お客さんに届ける過程(サプライチェーン)のどこにデジタル技術を入れるか、どれぐらい需要が増えたから発注するのかといった、バックエンドから集客までを一貫して設計できるからです。

 アパレルはそういった統合がかなり進んでいますが、外食は後れています。垂直統合でシステム化してないため、消費者の趣味嗜好に合わせたレコメンドすらできていません。他の業界に比べて、デジタル化が進んでいません。

西口 アパレルのSPA(製造小売り)はサプライチェーンの統合ができていますが、一般的な消費財メーカーはマーケティングとバックエンドが別の組織のため、マーケティングが成功しすぎて品切れを起こすことが多々あります。

すかいらーくの和田氏
すかいらーくの和田氏

和田 ファストフードとレストランは実は業態が異なります。ファストフードは売るだけなのでサービスがあまり必要とされません。ところが、レストラン業は10%売り上げが上がると、その分、人件費も10%上がるなど、コストが連動しています。その点で人材というキャパシティがあるため、小売りに近いファストフードとは異なります。

 ですから、マーケティングとオペレーションをつなげないと、破綻してしまう恐れがあります。すかいらーくはブランドが強いので、マーケティングや販促はそこまで難しくはありません。メディアの最適配分をして、リーチを最大化すれば、売り上げが上がるというのはとてもシンプル。ですが、それだけでは店舗のオペレーションが回らなくなってしまいます。

西口 (ファミリーレストランの中で)トップ・オブ・マインドの上位5位に入るすかいらーくのブランド力を生かして、背中を押して来店につながるようなマーケティングをしている。顧客の分析についてはいかがでしょうか。

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