データ分析ツール企業の米ソートスポット最高経営責任者(CEO)のスディーシュ・ナイア氏は、同社のツールはGoogleのようなシンプルさ、速さ、個別最適化といった特長を持ち、BIツール分野で先行する「Tableau」とは競合しないという。日本市場参入を前に来日した同氏に話を聞いた。
ソートスポットとはどのような会社なのか。
スディーシュ・ナイア氏(以下、ナイア氏) まず、基本的な考え方として、市場規模を考えるときに多くの人はTAM(Total Addressable Market:実現可能な最大の市場)で考える。BIやAI(人工知能)の市場に対して、1000億ドルの市場規模があるなどという言い方をするのだ。しかし、それはあまり意味がなく、SAM(Serviceable Available Market:TAMのうち特定の顧客セグメントの市場)や、SOM(Serviceable Obtainable Market:実際に自社が取得できる市場)を考える必要がある。
我々はBIツールの会社ではない
我々のサービスは、BI分野で大きな市場規模を獲得している「Tableau(タブロー)」と競合するサービスではない。同じ領域ではなく隣接する領域にあるという認識が重要だ。市場を大枠で見るのではなく、なぜこの領域において、新しいサービスが必要とされているのかを考えなくてはならない。そういう意味で、我々はBIツールの会社ではない。
ヒルトン、マリオットといった旧来のホテル事業者が「Airbnb」に苦戦する理由はなぜだろうか。それは、Airbnbがデジタルトランスフォーメーションの後にできた会社だからだ。古い企業は、お客さまを平均的な大枠で考えるが、Airbnbには平均という概念はなく、個別のお客さまに最適なサービスを考える。つまり、デジタルトランスフォーメーションとは、お客さまを一人ひとりの人間として扱うことなのだ。そのためにはデータが必要で、そこからインサイトを得て、知識に変えて初めて、お客さま個人にカスタマイズされた体験を提供することができる。それを実現するには、新しいアプローチが必要となる。それを提供するのが「ThoughtSpot」だ。
ThoughtSpotは具体的にどのようなサービスなのか。
ナイア氏 我々の創業メンバーは米グーグルから来た者が多い。なので、Googleからインスパイアーされたものが数多くある。1つはシンプルであること。Googleの検索バーはこれ以上ないシンプルさだ。そして、速さ。検索という体験ではパフォーマンスは最も重要だ。結果が速く提供されるからこそ、次から次へと検索し続けることができる。また、常に使える状態にあるというのも大切だ。さらに重要なのは、検索結果がAIによって個別に最適化されるということ。例えばGoogleで「小林一茶」と検索すると、(すべての人に同じ結果ではなく)検索したその人に最適化された情報が提供される。
しかし、Googleのようなサービスを提供しようと考えた時に2つの課題に直面した。1つはビジネスの質問はより複雑性が高いということだ。すでに存在している答えを出すだけではだめで、さまざまな最新データからリアルタイムに算出されなければならない。もう1つはセキュリティー、権限の問題だ。Googleと違って全員に同じものを全部見せるわけにはいかない。
ビジネス現場へ「回答」を提供
BIツールであるTableauなどは、会社の中のデータサイエンティストに製品を提供している。彼らは、経営層には迅速に答えを出せても、現場に対しては(手が回らず)週に1度アップデートされるダッシュボードで情報提供する程度だろう。集まるデータが増え続ける今のデジタルトランスフォーメーションの世界では、これでは遅すぎる。
これを解決するために、ソートスポットは2つのことをやった。質問を持っているのは現場だ。現場の人間が、質問を検索バーに入力するだけで、答えを導き出せるようにした。データサイエンスや(データベース言語の)SQLを勉強する必要はない。また、データが増え続ける中で、どんな質問をすれば分からないということもあるだろう。ここでAIを活用し、システム側からあなたが聞くべき質問はこれで、回答はこれだと教えてくれるようにしたのだ。
Googleのようにシンプルな検索バーがあり、「YouTube」のように他の人がどのようなものを見ているのかのトレンドを示し、(画像共有SNSの)「Pinterest」のようなインタラクティブな体験を提供し、(音楽ストリーミングサービスの)「Spotify」のように(気に入ったかを示す)サムズアップ・サムズダウンでAIを教育する仕組みを導入している。
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