ミツカンホールディングス(Mizkan Holdings)は2019年1月7日付で、CDSO(チーフ・ダイレクト・ストラテジー・オフィサー=最高ダイレクト戦略責任者)を新設し、ソフトバンクのデジタル情報推進室室長だった高橋宏祐氏が就任した。創業210年余という老舗企業のCDSOはどんな職務を担うのか、高橋氏に聞いた。

ミツカンホールディングス CDSO(チーフ・ダイレクト・ストラテジー・オフィサー)の高橋宏祐氏
ミツカンホールディングス CDSO(チーフ・ダイレクト・ストラテジー・オフィサー)の高橋宏祐氏

 ミツカンは独自技術を集結して野菜を丸ごと利用する「ZENB(ゼンブ)」という全く新しい食品ブランドを立ち上げ、19年3月5日正午にECサイト(https://zenb.jp/)をオープンさせる。

皮、芯、さやまでまるごと細かくつぶした濃縮野菜に雑穀やナッツ、果汁などを加えたスティックタイプの食品「ZENB STICK」(上)と、皮、芯、さやまで丸ごと滑らかにすり潰した濃縮野菜とオリーブオイルで作ったペーストタイプの食品「ZENB PASTE」(下)
皮、芯、さやまでまるごと細かくつぶした濃縮野菜に雑穀やナッツ、果汁などを加えたスティックタイプの食品「ZENB STICK」(上)と、皮、芯、さやまで丸ごと滑らかにすり潰した濃縮野菜とオリーブオイルで作ったペーストタイプの食品「ZENB PASTE」(下)

 同社は10年先の未来へ向けた「ミツカン未来ビジョン宣言」を掲げ、それを推進する「ZENB initiative」という取り組みを進めている。自然環境への負荷を減らしつつ、食そのもののおいしさを引き出し、新しい健康を提供するという。ZENBの開発はその一環だ。

 こうしたミツカンの大変革を担うデジタル人材の一人として選ばれたのが、ミツカンホールディングスの執行役員CDSOとなった高橋宏祐氏だ。デジタルマーケティングの専門家で、前職のソフトバンクではデジタル情報推進室室長などを務めた。ミツカンは18年11月1日には、日本マクドナルド マーケティング本部デジタルエンゲージメント部上席部長だった渡邉英右氏を採用し、執行役員CDO(最高デジタル責任者)に任命するなどデジタル変革へ積極的だ。

 ZENBの発売直前に高橋氏を訪ねて、新天地でのミッションから、マーケターとしてのキャリアパスの在り方まで聞いた。

クラウドファンディングで目標の6倍超集める

CDSOとは聞き慣れないが、どんな仕事を担当するのか。

ざっくり言うと、新規事業創出担当だ。その中でもEC(電子商取引)を担当する。ものを売る新たなビジネスモデルを作るために入社した。ミツカンは今、大きく変わろうとしている。18年11月に発表したZENB initiativeという新たな取り組みの下、野菜を丸ごと使った食品ブランドZENBを立ち上げる。これは、野菜を全部砕いて、おいしく摂っていただくという商品だ。食物繊維が豊富で、無駄なものが出ないのが特徴で、家庭にも生産者にも優しく、そして健康にもいい。クラウドファンディングの「Makuake」に試作品のペーストやスティックを掲載したところ、目標金額50万円に対して、約2カ月間で支援者555人、336万2500円の支援金が集まった。これを世に出していくことに可能性を感じた。

そういった大きな会社のビジョンがあり、事業がある上でCDSOがあるという立ち位置なのか。

そうだ。デジタルで新しいビジネスをしていくという会社の方針、戦略がある中で人材が必要ということで私を選んでいただいたということだろう。

なぜ、今、このブランドを立ち上げるのか。

技術的には昔からあったものだが、今ある技術の中で使える使えないの棚卸しをしていった際に、この技術が行けそうだというものがあって、今回、商品化に踏み込んだ。他社が簡単にまねできない、ミツカンならではのさまざまな技術を利用している。

CDSOが新設された背景は?

私は事業をやるためにミツカンに来た。マーケティングだけには収まらない、(メーカーが消費者に直接販売する)DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)モデルをちゃんと作っていく人間として、自分と担当役員で考えた新たな名称だ。プロジェクト全体では結構な人数がいるのだが、私の所属するチームは「ダイレクト戦略グループ」というところになる。今、5人のメンバーがおり、ベンチャー的な感じで活動している。

 もともとミツカンにいたメンバーばかりで、納豆のマーケティングをしていたり、広報がバックグラウンドだったり、調査室出身だったりなど、みんなバラバラだ。ダイレクト販売を専門にしてきたメンバーではないが、熱気があり可能性を感じている。やる気があって可能性があれば、結果はついてくると思っている。

ZENBは、既存の流通に流すことはないのか。

今のところはダイレクト販売を考えている。なぜなら、突然店頭に置いても、お客さまに分かってもらうのはなかなか難しい商品だと思っているからだ。なぜミツカンがこういうものを作ったのか、どういう商品なのか、どういう風に食べていただきたいのか。相当な情報をお客さまに提供して理解していただくというのがセットでないといけない。それができるチャネルがダイレクトチャネルで、まずはそこからやっていこういうことだ。

そういう情報提供が必要となると、オウンドメディアが大切になる。

今はいろんなことをやろうとしている。その取っ掛かりが自社サイトだ。世の中の人にいかに理解していただけるかは、トライアンドエラーだと思っている。単なる広告モデルではない強いオウンドメディアでちゃんと発信していく必要があるだろう。外食産業の方や、栄養士、医学博士など、外部の食のプロフェッショナルにも参加していただいている。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
この記事をいいね!する