富士通はAI(人工知能)事業におけるグローバル展開の戦略策定やその実行を担う会社「FUJITSU Intelligence Technology」をカナダのバンクバーに設立。2018年11月1日に事業を開始した。同社CEOの吉澤尚子・富士通執行役員常務に、AIの戦略拠点をカナダに選んだ理由などを尋ねた。

カナダFUJITSU Intelligence Technology CEO(最高経営責任者)
日本企業の多くが、AI活用ビジネスについて、PoC(概念実証)段階にとどまっており、なかなか実運用に進まないが、どう思うか?
ご指摘の通り、私自身もPoCでとどまっているケースが多いと肌で感じている。昨年開催した当社のイベント「Fujitsu Insight 2018」に参加した顧客にAI活用に関してアンケートを採ったが、「PoCを検討している」が約4割、「PoCを実施した」が2割弱(16%)、「構築フェーズ」が1%、「運用フェーズ」はゼロだった。
一方で私自身、2年前からAI活用について顧客と対話してきたが、顧客も勉強し始めている。AI活用でPoCを始める際、顧客は「一緒にやる相手はスタートアップ企業で十分」と考えている。コストは安いし、言うことを聞いてくれるからだ。PoCどまりが多いのは、スタートアップ企業はSI(システムインテグレーション)までできないからである。そのことが分かっている顧客は当社に声をかけてくれる。
日本企業は、AIの研究開発もビジネス活用も世界の企業に比べて出遅れており、「AI後進国」だと思うが。
AIのビジネス活用が進まない一因は
AIの研究開発において、アカデミアは頑張っていると思う。しかし、業務をよく知っている企業がけん引しないと、AIのビジネス活用は進まない。当社にも責任があるのかもしれないが、そこが課題だ。ただ、富士通が日本の顧客にクラウドを提供しているが、そこで具体的に何をやっているのかあまりオープンにしてくれない。
そうした経験から、海外に行くべきだと考えた。AIビジネスの市場も大きい。AI技術は、ビジネス側で引っ張っていくのが近道だ。海外企業のニーズに対して、日本でAI技術を磨いて応えていくという考え方だ。一企業当たりのAI投資は、日本に比べて海外は約20倍(17倍以上)大きい。
ディープラーニング(深層学習)技術の開発などはどう対応しているのか?
ディープラーニングはすごいブレークスルーの技術だが、それだけでは解けることは局所的になる。だからビジネスになっていかない。とりわけ画像技術については、前処理が重要になっている。いずれにしても、パートナーが必要になってくる、AIは広すぎて1社では対応できない。
とにかく自分たちのコアのAIと他社の技術を組み合わせて最短でソリューションを作ることが必要だ。AIをいかに売れる形にしないと、市場になっていかない。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー