セイコーウオッチは、ラグジュアリーウオッチ市場を勝ち抜くため、デザイン経営へ舵を切る。2018年に初出展したミラノサローネで、独自機構「スプリングドライブ」をアピールして反響を呼び、手応えをつかんだ。

高橋修司(たかはし・しゅうじ)氏
セイコーウオッチ 社長兼COO兼CMO
1957年東京生まれ。80年早稲田大学理工学部卒。服部時計店(現・セイコーホールディングス)入社。2013年セイコーHD取締役。15年セイコーウオッチ取締役専務執行役員。17年4月から現職。

──2018年4月のミラノサローネ(以下、サローネ)に御社としては初めて出展して、好評だったそうですね。

高橋修司氏(以下、高橋) 時計業界の大規模な見本市に、バーゼルワールドがあります。この見本市に1986年から出展を続けています。世界中の時計メーカーがそこで新商品を発表するのですが、アピールできる範囲は、メディアも含め時計業界関係者にとどまります。さらに広く訴求するには、別の方法での発信が必要だと考え、サローネに出展することにしました。

 サローネには、ファッションや自動車、家電、インテリアなど世界各国の有力ブランドが集まる他、商品をただ見せるのではなく、コンセプチュアルな展示が多いと聞いていました。そのなかで、腕時計のブランドとしてどこまでアピールできるかと半信半疑だったのですが、とにかく、我々がものづくりを通して継承してきた日本ならではの感性価値を世界に発信しようと思っていました。

──会場で展示をご覧になっていかがでしたか。

高橋 大変なにぎわいで、来展者は、6日間で合計3万3000人に達しました。私がいた時間帯にも、入場待ちの行列ができたり、他業界の出展者が評判を聞いて、足を運んでくれたりしたこともあり、大きな手応えを感じました。

 ラグジュアリーウオッチ市場では、世界の有名ブランドが個性を競い合っています。我々は、日本の特性や個性をブランドのバックボーンとして打ち出すことが、市場で勝ち抜く条件だと思っています。今回の展示でも、時計をただ並べるのではなく、他社がまねできない独自機構である「スプリングドライブ」を、感性的に表現することを大切にしました。

 スプリングドライブは、ぜんまい駆動の機械式でありながらクオーツの高精度を実現した機構で、秒針が滑らかに動く点に特徴があります。この動きには時間に対する日本特有の考え方や世界観に通じるものがあると思っています。こうした発想をベースに吉泉聡氏と阿部伸吾氏に展示を製作してもらいました。おかげで、地元紙に好意的に取り上げられた他、国内のデザイン賞を受賞するなど、期待以上の成果を上げることができました。

ミラノサローネでの展示「THE FLOW OF TIME」。形状の異なる12体の透明なオブジェに、200以上からなるスプリングドライブの時計部品を封入。オブジェの背後には、太陽や天体の軌道、舞い散る花びら、水紋などの映像を投映し、時の移ろいを表現している。DSA日本空間デザイン賞2018金賞およびSDA賞(第52回日本サインデザイン賞)銀賞を受賞。2018年10月に東京・青山で凱旋展示を開催した他、今後海外にも巡回する予定 プロデュース:桐山登士樹氏/クリエイター:吉泉聡氏(TAKT PROJECT)、阿部伸吾氏
ミラノサローネでの展示「THE FLOW OF TIME」。形状の異なる12体の透明なオブジェに、200以上からなるスプリングドライブの時計部品を封入。オブジェの背後には、太陽や天体の軌道、舞い散る花びら、水紋などの映像を投映し、時の移ろいを表現している。DSA日本空間デザイン賞2018金賞およびSDA賞(第52回日本サインデザイン賞)銀賞を受賞。2018年10月に東京・青山で凱旋展示を開催した他、今後海外にも巡回する予定 プロデュース:桐山登士樹氏/クリエイター:吉泉聡氏(TAKT PROJECT)、阿部伸吾氏