レイ・イナモト氏はCreativity誌「世界の最も影響力のある50人」に選ばれるなど、世界で活躍するクリエイティブディレクター。ナイキ、グーグル、ユニクロなどの戦略立案と実行をリードする彼が、次のヒットのキーワードを語った。

テクノロジーが次々と新しくなり、若い人の志向も変わってきている。新商品の作り方についてみんな悩んでいます。
レイ・イナモト氏(以下、イナモト) 何かものを作ったとき、それがどれだけ正確に動くかという精度が95%のうちは、限られた人にしか売れない。これが、99%まで上がると一気に大衆に受け入れられます。スマートスピーカーのアマゾンアレクサは、音声認識の精度が99%に至る少し前の段階で世に出て、そして多くの人に支持されました。
今は95%だけれども、近いうちに99%になるテクノロジーはありますか。
イナモト 少し前はそれが音声認識。これからは画像認識でしょうね。フェイスブック上でも、「この顔とこの顔は似ているから同一人物」と強引につなげていたのが、人間と同じように認識できる。図形としてしか認識できなかったのが、「これはヒョウ柄」「これは眼鏡」と認識できるようになってきています。ピンタレストやグーグルレンズである服を見ていいなと思ったら、次に同じ服を見つけたときに認識してくれるわけです。
例えば僕のEメールの書き方をモニタリングし、僕らしい口調でメールを書くというサービスも出てきています。
新技術にどんな可能性があるかはやってみないと分からない部分がある。今後は、「インパーフェクション」(不完全)がキーワードです。完璧なものを作って売るのが企業の役割だったけれども、不完全な状態でも世に出してアップデートしていけばいいんです。3Dプリントが発達することで、開発途中のものでも一度発売してみることができてしまう。そういった発想の転換で、商品開発のサイクルをいかに短くできるかが勝負です。
時間をかけたものづくりをしていられる時代ではないと。
イナモト そう、圧倒的にスピードが求められています。以前は、ユニクロでも新商品を出すのに18カ月ほどは必要だった。そうしないと生産が追い付かなかったんですね。ところが今は、島精機のホールガーメント技術から生まれた「3Dニット」のように、スピーディーに生産できるシステムができた。

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