日本におけるデータサイエンスの重要課題として挙げられるのが、「人材育成」だ。多くの企業が「データ駆動型ビジネス」に軸足を移している現在、産官学が連携して「データの扱いを熟知したプロ」を育成することが求められる。統計数理研究所は、こうしたニーズに対応すべく、「現場の課題解決を支える研究と、その人材育成」に注力する。では、データサイエンティストを育成するためには何が必要なのか。統計数理研究所長を務める樋口知之氏に話を聞いた。

情報・システム研究機構理事 統計数理研究所長
1989年東京大学理学系研究科博士課程修了後、文部省統計数理研究所に入所。2011年より情報・システム研究機構理事 統計数理研究所長。専門はベイジアンモデリング。最近は、データ同化およびエミュレーション(シミュレーションの機械学習による簡便代替法)の研究に注力している。日本統計学会、応用統計学会、電子情報通信学会、人工知能学会、日本応用数理学会、日本バイオインフォマティクス学会、日本マーケティング・サイエンス学会、 International Statistical Institute、American Geophysical Union等の各学会の会員。一般社団法人データサイエンティスト協会顧問。また、日本学術会議の数理科学及び情報学分野の連携会員でもある。1961年7月5日生まれ
近年、「ビッグデータ活用」の必要性が叫ばれている。ビッグデータを取り巻く現状と変化を教えてほしい。
統計数理研究所の設立は1944年で、来年75周年を迎える。しかし、われわれが「どのような研究をしているのか」を一般の人が理解するようになったのは、最近のことだ。その理由は、「ビッグデータ活用」という言葉が社会に浸透してきたからだと考える。
これまで、「統計数理」や「データサイエンス」といっても、「それがどのように役に立つのか」を理解していた人は少なかった。しかし、ビッグデータの登場で、「データを利活用するにはどのような“道具”が必要なのか」を考え、その“解”となるのが統計や機械学習だと認識するようになっている。
ビッグデータの登場で、統計数理研究所の認知度も上がってきたと……。
統計数理研究所はデータ分析によって、予測・知識を獲得し、適切な意思決定をする方法を研究している。「データをどのように活用していくか」を研究している、日本で唯一の機関だ。
現在われわれは、横軸を基幹的研究組織、縦軸を研究施設とする「2軸構造体制」で研究教育活動を行っている。
かつては、統計数理やデータサイエンスといった基幹的研究を基盤に、「それらがどのような課題に対して応用できるか」を考えていた。そして、基礎研究と応用分野で「クロスポイント」を設定し、研究を重ねていた。しかし、こうした手法は、課題解決までに時間がかかり、現代のニーズには合わない。
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