教育界で異彩を放つ花まる学習会を率いる高濱正伸代表。最初は赤字続きで試行錯誤の連続だったそうだが、失敗しても落ち込まない理由は中学1年生からつけ続けている日記にあるという。「何に落ち込んでいるかを明確に言語化することで、何かに執着しているだけだと気づいたのです」

 本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、そして、どのように磨けばいいのかについて、失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

 今回は前回に続き、はなまる学習会代表でNPO法人「子育て応援隊むぎぐみ」の理事長を務める高濱正伸さんにご登場いただきます。高濱さんは、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にした「花まる学習会」や「スクールFC」をはじめ、障がい児の学習指導、青年期の引きこもり相談など、多岐にわたる活動を繰り広げています。

 前編では新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、多くの人が「自分にとっての大切」を見つめ直し、「つつがなく続けていく価値観」が変わらざるを得なくなること。教育も仕事もより本質に向かい、物事の善しあしを判断するに当たって「勘」や「感」が重要な役割を果たすこと。新しい発想は問題意識から出てくることなど、刺激的なお話を伺いました。後編では、「勘」や「感」はどうやって磨けばいいのか、学びの過程について聞いています。

花まる学習会代表の高濱正伸氏は1959年熊本県生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学に入学。90年同大学院修士課程修了後、93年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した小学校低学年向け学習教室「花まる学習会」を設立。障がい児の学習指導や青年期の引きこもりなどの相談も引き受け、NPO法人「子育て応援隊むぎぐみ」として運営。算数オリンピック委員会の理事も務める
花まる学習会代表の高濱正伸氏は1959年熊本県生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学に入学。90年同大学院修士課程修了後、93年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した小学校低学年向け学習教室「花まる学習会」を設立。障がい児の学習指導や青年期の引きこもりなどの相談も引き受け、NPO法人「子育て応援隊むぎぐみ」として運営。算数オリンピック委員会の理事も務める

川島 高濱さんは、教育にかかわる広範な仕事をされています。コロナ禍で、日本の学校教育はどう変わるのでしょうか。

高濱 「学校に行く意味」が再定義されると思います。リモートでやることと、集まらなければいけないことが区別されていく。集まる場というのは、主に文化祭や運動会、部活などが担っていく。ワイワイガヤガヤやりながら、1つの目標に向かっていくときに人は成長するものだからです。

川島 そこに学びの本質があるということですね。でもそれって、仕事にも共通しているのかもしれません。かしこまった会議より、ワイワイガヤガヤのほうが楽しいですから。それではズバリ、人はどうして学ばねばならないのでしょうか。

高濱 学ぶことが好きだからです。

川島 えっ、学校の勉強が面白かったという記憶がほとんどなくて、学ぶのは鍛錬とか我慢というイメージが強いのですが。

高濱 日本の学校教育の大半は学びが正しい答えを出さなくてはいけないものになっていて、喜びにつながっていないのです。しかし本来、人間は学ぶことが大好きな動物。例えばここに、コップが1個置いてあるとするじゃないですか。すると子どもは必ず「何だろう」と手に取って考え出すのです。学びの根底には「世界を知りたい」という欲求がある。学びが喜びになっていないのは、学校でそういう経験をしてこなかったからです。

川島 「何?」「どうして?」と思う瞬間は大人になってもあることで、確かにワクワクドキドキします。

高濱 実はこれ、年齢に関係ないことでもあります。だから現役を退かれた方が、それまでと別の分野で学び始めること、これからますます増えると思っています。学びとは知の探究であり、ゴールがないこと。知れば知るほど、「もっと知りたい」という気持ちが出てきて面白くなっていく。“人生とは学ぶこと”と言っても過言ではないのです。

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