コンサルティングファーム・A.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明氏は、「これからの街づくりのキーワードは『オーセンティック』と『ローカル』。その場でしか体験できない本物を求める方向はコロナ後に強まる。それはまた、地域のコミュニティーで支持されているローカルなものでもある」と言います。

 本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか。そして、どのように磨けばいいのかについて、失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

 今回は前回(A.T.カーニー梅澤氏「ライブも外食もハイブリッドで進化すべし」)に続き、梅澤高明さんにご登場いただきます。梅澤さんはコンサルティング会社を率いながら政府のいくつかの委員に名を連ね、「ナイトタイムエコノミー推進協議会」の共同創設者を務めるなど、多面的な活動をしている方です。

 前回は、これからはリアルのコンテンツの価値を上げるチャンスになること。コロナ禍の文化活動と関連業界に対しては短期的な策だけでなく、コロナ後に向けて事業モデルをどう進化させるかという中期的な策が必要になること。例えばライブイベントで、リアルの観客が50人、配信で楽しむ観客が5000人といったように、ハイブリッドな形でやっていくべきだということ。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むのは間違いないものの、デジタル化が進めば進むほど人間の創造力の価値は上がっていくというお話を伺いました。

 今回は、都市の開発や地方の可能性、日本企業がコロナ禍を契機に変わっていけるかどうかを聞いています。

A.T. カーニー日本法人会長/CIC Japan会長の梅澤高明氏。東京大学法学部卒、MIT経営学修士。日米で25年にわたり、戦略・イノベーション・マーケティング・組織関連のコンサルティングを実施。クールジャパン、知財・デザイン、インバウンド観光、税制などのテーマで政府委員会の委員を務める。一橋ICS(大学院国際企業戦略専攻)特任教授
A.T. カーニー日本法人会長/CIC Japan会長の梅澤高明氏。東京大学法学部卒、MIT経営学修士。日米で25年にわたり、戦略・イノベーション・マーケティング・組織関連のコンサルティングを実施。クールジャパン、知財・デザイン、インバウンド観光、税制などのテーマで政府委員会の委員を務める。一橋ICS(大学院国際企業戦略専攻)特任教授

川島 さまざまな開発に関わっている梅澤さんに、ぜひ聞いてみたいことがあります。私は以前から、日本全国で大規模な開発プロジェクトが進んでいるけれど、あんなにたくさんいらないのではと思っていたのです。

梅澤 少し過剰な気がしていました。オフィスも住宅も需要はさほど増えないし、小売りを取り巻く環境はショールーミングとしてのリアル店舗とECの組み合わせに変わりつつありました。さらにコロナ禍の結果、サテライトオフィスや自宅勤務の活用が進み、本社オフィスを縮小する企業も出てきます。かといって、開発そのものを否定するわけではありません。

川島 どんな開発になっていくのでしょう。

梅澤 リアルな体験ならではの価値を軸としたものです。現段階でのデジタルは、視覚と聴覚という“二感”に限定されています。リアルは、“五感”をフルに楽しませてくれるところに、価値が出てくるのではないでしょうか。具体的には美術館だったり、ライブホールだったり、スポーツジムの進化版みたいなものかもしれません。心身が楽しさや喜びを感じられるコンテンツは、これからの複合開発で欠かせない存在になっていくと思います。

川島 駅前のファッションビルや郊外型SC(ショッピングセンター)など、大型開発の大半は似たような構成で、どこも同じになっていくのも嫌だと感じているのですが。

梅澤 コロナ前から僕は、「ナショナルブランドを入れないストリートをつくろう」という提案をしていました。

川島 それは面白そうですが、成立するのでしょうか。

梅澤 大丈夫です。その通りの賃料は半分くらいになるかもしれませんが、そういうストリートがあると、その街ならではの独自性を出すことができるのです。そしてストリートが人気スポットになり、街のトラフィックが増えれば、他の場所も商業化できる可能性がある。街全体が自力で元気になっていく。そんなやり方は、これからますます広がっていくと見ています。

川島 地方に行って記憶に残るのは、その土地ならではのもの。お店でいえば、路面の小さなブティックだったり、裏通りにある飲食店だったりする。かといって、昔の商店街を復活させるだけだと、単なるレトロ志向になってしまう。そうではなく、これからを感じさせる魅力が必要だと思います。

梅澤 にぎわっている裏路地ってありますよね。小さな店が軒を連ねていて、その大半をオーナーシェフがやっているみたいな。そういう場を生かしながら、街全体のこれからをつくっていく考えなんです。

川島 楽しいですね。梅澤案に賛成です!

梅澤 大型のものも、中小規模のものも、開発そのものがもっと多様化していけばいいと僕は考えています。

 最近、気になっているキーワードは「オーセンティック」と「ローカル」。観光で例えるなら、その場に行かないと体験できない本物、つまりオーセンティックなものを求める方向はコロナ後にさらに強まると見ています。それはまた、地域のコミュニティーで支持されているローカルなものでもある。そう考えると、中小規模のものであっても、オーセンティックでローカルであれば、十分にやっていける時代なのです。

川島 クリエイティブであることも大事ですよね。

梅澤 特に若手のアーティストやクリエイターが創造、発信するローカルの拠点は、大事に守っていく必要がある。ライブベニューなどの文化拠点の多くが、コロナ禍で存続の危機に直面しています。コミュニティーに根差した拠点がなくなると、新しい文化が生まれずにコンテンツ産業も滅びてしまいます。文化の発展や街の活性化という視点で言うと、ローカルな創造活動が活発で、かつ都市全体で見ると多様性がある状態が理想的です。

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