「ひふみ投信」を手掛けるレオス・キャピタルワークス社長・最高投資責任者の藤野英人氏は「35歳以下の起業家はその上の世代とは正反対と言っていいくらい異なる価値観を持っている。世の中の何かを変化させること自体にダイナミズムを感じている」と言います。
本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、そして、どのように磨けばいいのかについて、失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。
今回は前回に続き、レオス・キャピタルワークスの社長を務める藤野英人さんにご登場いただきました。藤野さんは成長企業に投資するファンドを手掛ける一方で、投資教育に力を注ぐなど、幅広い活躍をされています。
前回の記事では、いわゆる「働き方改革」には本質的な意味を掘り下げていないケースが多いこと、その原因は働く意味や意義を問うてこなかった日本社会の特殊性にあること、働くことは本来楽しくて「好き」であることが大事、といったお話を伺いました。
そして、藤野さんの「勘」と「感」から世の中の潮流を見ると、保守的な動きが目につくものの、ベンチャー精神を持った若い人が急速に増えているという明るいお話も。今回は、そういった若い人の出現と、それによって日本の未来はどうなっていくのかを聞いています。
川島 発想がユニークで実行力があり、人格的にも素晴らしい。そんなベンチャー精神を持った起業家が増えているということですが、実際のところ、どんな人たちなのでしょう。
藤野 おおよそ35歳以下の人たちで、その上の世代の起業家とは、明らかにキャラクターが違います。
川島 何がそんなに違うのですか。
藤野 簡単に言うと、上の世代の起業家たちの大半は、事業を興す目的が「成功者」になってお金を手に入れること。起業はそのための手段です。ただ目的意識がある意味シンプルで強烈なので、新しいことに挑み、乗り越えていくパワーを持っていた。ところが、35歳以下、もっと言えば20代の起業家は、正反対と言っていいくらい異なる価値観を持っているんです。
川島 正反対ですか。
藤野 事業を興す目的が、事業そのものにあるのです。それぞれの起業家が使命感を持って、世の中の何かを変化させること自体にダイナミズムを感じている。成功者のステータスとして高級車を買ったりするのなんて、彼らはまったく興味がない。目的と手段が完全に重なっていて、そこに圧倒的なエネルギーを注いでいるのです。
川島 その差はどこから生まれているのですか。
藤野 親世代の価値観が違うのではないかと。若い起業家の親たちは、団塊世代よりひと世代若い層。それが大きく作用していると僕は見ています。若い起業家の親世代は、団塊世代特有のマッチョな感覚、分かりやすく言えば、いい大学に行って、いい会社に入って、死ぬほど働いて出世するといった、楽しくなくても好きでなくてもやり抜くことに意味があるという思考がないのです。
川島 その層は団塊世代への反発も持っていて、かつてはシラケ世代などと呼ばれていました。
藤野 彼らは、子どもにマッチョな価値観を押しつけないわけです。好きなことを徹底してやって楽しく生きることが大事、そういう価値観を許容する人たちです。
それと、僕の専門分野ではないのですが、もう1つ考えられる要因は、いわゆる“ゆとり教育”が突出した才能を持った子が伸びるのに良い方向に作用したということです。
川島 ゆとり教育を受けた層は、今の10代から20代になりますね。
藤野 例えば、スポーツや文化の世界ですごい子たちがたくさん出てきています。フィギュアスケートの羽生結弦くんやプロ野球の大谷翔平くんなど、世界で通用する才能が花開いている。将棋の藤井聡太くんもまだ17歳なのに、顔つきも態度も立派な大人です。ビジネスの世界でも、ああいった雰囲気を持った若い経営者が続々と出てきているんです。
川島 ようやくといった感じもしますが。
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