レオス・キャピタルワークス社長・最高投資責任者の藤野英人氏が今ハマっているテーマが、下戸の人たちに向けた市場を開拓する“ゲコノミクス”。「お酒の市場は約3兆円あるが、その10%くらいをゲコノミクスで開拓できれば、3000億円の市場が生まれる」と言います。
本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、そして、どのように磨けばいいのかについて、失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。
今回は、レオス・キャピタルワークスの社長を務める藤野英人さんにご登場いただきました。藤野さんは国内・外資大手運用会社でファンドマネジャーとして名を馳せ、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。ご自身が運用責任者を務める「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」など、主に日本の成長企業に投資するファンドを手掛けています。一方、投資教育にも力を注ぎ、明治大学商学部兼任講師、JPXアカデミー・フェロー、東京理科大学上席特任教授など、幅広い役割を担われています。
以前にインタビューしたとき、投資についてほぼ素人といっていい私に対し、難しいことや本質的なことを分かりやすく説明してくださる。しかも随所にユーモアが散りばめられている一方で、要所要所に厳しい眼差しや鋭い言葉が垣い間見えるのが印象的でした。こういう方だから、会った人は耳を傾け、引き込まれていくのだと感じ、もっと聞きたくなったのです。
常に未来に目を向け、どんな企業が成果を出していくのかを見極めて応援していく藤野さんの「勘」と「感」について、伺いました。
川島 最近、藤野さんが面白いと思っていることは何ですか。
藤野英人氏(以下、藤野) 僕が今ハマっているテーマは「ゲコノミクス」で、2020年春に本も出す予定です。近々、糸井重里さんにも話を聞きに行こうと思っているんです。糸井さんも下戸ですから。
川島 私も下戸なので、ものすごく興味があります。
藤野 ゲコノミクスとは、いわゆる下戸の人たちに向けた市場を開拓することで、世の中がもっと豊かになることを指しています。今まで下戸の人たちって、飲食店に行っても少し損している感じがあったじゃないですか。
川島 そうですね。下戸だからお茶などのソフトドリンクを頼むんですが、お酒に比べるとバリエーションが圧倒的に少ないし、メニューの最後のほうに添え物みたいに書かれている。選べないって少し損だし、もっと言うと、相手にされていない感じ、どこかにずっと持っていました。
藤野 そこのところを良くしてあげたらいいと考えたのです。例えば、フレンチや和食で、それぞれの料理に最適なお酒を組み合わせて出すペアリングのコースってありますよね。あれのお茶バージョンがあってもいいし、厳選されたソフトドリンクのメニューのバリエーションを広げてもいい。いろんなやり方ができるだろうし、それに対してお金を出す下戸の人って少なくないと思ったのです。
川島 そういう人がいると言う実感、確かにあります。
藤野 それで下戸経済が「ゲコノミクス」、下戸評論家は「ゲコノミスト」だと(笑)。
川島 それでゲコノミクスは具体的にどういうことをやっていくのですか。
藤野 何をすればいいかをもう少し具体的に言うと、飲食店がそこに気づいて少し力を入れれば、客単価を上げられるということなんです。今、お酒の市場は約3兆円あるのですが、その10%くらいをゲコノミクスで開拓できれば、3000億円の市場が生まれるわけですから、やらない手はないと。それでフェイスブックで「ゲコノミスト(お酒を飲まない生き方を楽しむ会)」というグループを作ったら、どんどん盛り上がってきたので、これはいけると思いました。
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