コクヨの黒田英邦社長は働き方改革について、「仕事や働くことをどう捉えるかが大切で、制度はあくまで目的に向かうためのもの。ワークとライフのどういうバランスがいいのかはずっと考えているが、やっぱり『仕事が楽しい』が大前提だと思う」と言います。

 本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、そして、どのように磨けばいいのかについて、失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

 今回はコクヨの社長を務める黒田英邦さんとの対談の3回目です。経営トップとして4年、歴史ある企業の中で“続けていくこと”と“変えていくこと”の双方に取り組み、成果が業績にも社風にも表れてきています。

 前回は「自分はこうしたい」という社員からのアイデアを生かせる環境を作るため、社長はあえて“わざとらしく”すること。物事を少しでも前向きに進めるには楽しさやユーモアが必要であり、自らあえてそこに踏み込んでいることなどを伺いました。今回は、働き方改革やワークライフバランスなど、仕事を取り巻く環境や、ビジネスのチャレンジと成果について聞いています。

コクヨの黒田英邦社長は2001年4月コクヨに入社。オフィス家具部門の法人営業、経営企画部長、コクヨファニチャー社長を経て、15年よりコクヨ社長に就任
コクヨの黒田英邦社長は2001年4月コクヨに入社。オフィス家具部門の法人営業、経営企画部長、コクヨファニチャー社長を経て、15年よりコクヨ社長に就任

制度は「目的に向かう」ためのもの

川島 世の中では「働き方改革」についてさまざまな制度やルールが作られていますが、中にはそのルールでがんじがらめというケースもあるようです。英邦さんは、どんなふうに捉えていますか。

黒田 働き方改革では仕事や働くことをどう捉えるかが大切で、制度はあくまで目的に向かうためのものと捉えています。

 そういえば制度について、ちょっと面白いことがありました。ビジネスの場における服装のカジュアル化が進んでいるので、うちも社内規定を変えてもいいかなと思って担当部署に言ってみたのです。そしたら「そもそも、うちには服装規定がありません」という返事(笑)。改めて社内を見渡してみると、お客さまにお会いするときはそれなりにわきまえているし、極端なカジュアルウエアの人はいない様子。「これならあえてルールを作らなくていい」と納得したのです。

川島 いいお話です。ルールを作ると、今度はそれに当てはまるか当てはまらないか、線引きはどうするのかという議論が出てきたりして、一人歩きしていくことって少なくないですから。

黒田 ルールを作るときは、少しセンシティブに考えないといけないですね。そして何より制度とは前向きな目的に向けるべきで、制度ありきではないことを戒めておかないと。そこが肝要だと思います。

「仕事が楽しい」が大前提にある

川島 ワークライフバランスについてあえて聞きたいのですが、どう考えていらっしゃいますか。

黒田 ワークとライフのどういうバランスがいいのかはずっと考えていますが、やっぱり「仕事が楽しい」が大前提だと思うのです。楽しいというのは、ラクと違って「自分が面白いと感じられるか」ではないかと。そういう仕事を作れるかどうかが、トップとしての僕の役割と捉えています。

川島 そうは言っても、実際のところ、なかなか難しいのではないでしょうか。

黒田 僕自身が言い続けるとともに、社員が「あの仕事は面白そう」とか「こんな仕事が面白い」と感じてやってみる機会を増やすことを心掛けています。本来、人は自分の能力や価値を高めていきたい、成長していきたいものと思っていて、同じ仕事なら生きがいになるものがいいと思うのです。

川島 限られた時間だけ仕事をこなし、プライベートな時間を楽しめばいいという風潮も一部にありますが。

黒田 人生の決して少なくない時間を仕事に割くわけですから、「面白くないものをやらされている」よりも、「面白いことをやってみる」ほうがいいと思うのです。そうなっていれば、たとえ制約があったとしても、何とか乗り越えようとするのではないでしょうか。自分の過去を振り返っても、例えば、10個の仕事をやっていたとして、そのうち1個か2個が楽しかったら、残りの8個や9個は我慢できる。そういうものだと思うのです。

川島 「お金のために働く」という価値観もあります。

黒田 給料のためというところがある一方、会社は社会との結節点でもある。自分が社会とどう関わっているのかを実感できる場と、僕は見ています。個人がどのように社会に参加していくのかが問われる、体験できる会社にしていけたらいいと考えています。

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