「マーケティング調査だけを基にしたものづくりでは意味がない。自分がどうしたいのか、そこを突き詰めてほしい」とコクヨの黒田英邦社長。その意識を持ってもらうために、あえて“わざとらしく”行動しているそうです。

 本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、そして、どのように磨けばいいのかについて、失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

 今回は前回の記事「コクヨの若き社長が実践する『“自分事”社員を増やす方法』」に続き、コクヨの社長を務める黒田英邦さんにご登場いただきます。家業の経営トップを受け継いで4年。さまざま社内改革を行うことで、社員の姿勢が変わることに注力してきました。

 前回の記事では、新しいことをやるにあたり、必ず反対意見を言いそうな社員の意見も聞くこと。なぜならそういう人は、他人事ではなく「自分事」としてとらえているから。あるいは、やったことがない仕事に挑戦する社員は、40代でも50代でも殻を破って変わっていくこと。そういう土壌を築くことと並行して、今後は事業そのものを変えていくのに力を入れていくことなどが印象に残りました。今回は、事業を変える発想力や、誰もが提案できる風土作りについて、具体的に聞いてみたいと思います。

ifs未来研究所所長の川島蓉子氏(左)とコクヨの黒田英邦社長(右)
ifs未来研究所所長の川島蓉子氏(左)とコクヨの黒田英邦社長(右)

商品開発は「顧客起点」と「自分はどうしたいのか」の両立が大事

川島 前回は、針がいらないステープラー「ハリナックス」や、体幹を鍛える椅子「イング」など、「こんなものがあったらいい」という発想を盛り込んだ製品を、これからもっと開発していきたいというお話を伺いました。

黒田 そのときに大事なのは、起点が作り手にあるのではなく、使い手であるお客様にあるということです。それも、マーケティング調査だけを基にしたものづくりでは意味がない。もちろん、ヒアリングや調査をしてもいいのですが、それが「答え」ではないのです。本当に自分がどうしたいのか、まずはその発想が大事なわけで、そこを突き詰めてほしいと思います。

川島 おっしゃることはよく分かるのですが、誰もができることじゃないと思うのです。

黒田 言うは易しですが、全員に浸透させるのは簡単なことではありません。

川島 そこはどうしているのですか。

黒田 僕は、思いっきり“わざとらしく”することにしています。例えば、「うちのオフィスは壁が1枚もありません」と言ってしまう。そこまで分かりやすくすると、“わざとらしく”なるんです。

川島 社長があえて極端に振り切ってしまうということですね。その極端さの中に少しのユーモアがあり、クスッと笑えそうなところがほっとします。ともすると「~ねば」「〜すべし」ばかりですから(笑)。

黒田 仕事を「もっと楽しく」とか「前向きに」とかいう方針を出しても、環境や風土がシリアスできりきりしていたら、「ワークハード!」と言っているように聞こえてしまいますよね。少し笑えるくらいのほうが、受け取る側の自由度が高くなると思っているのです。

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