ソニーのデザイン部門が実践する、デザイナーが独自のテーマでリサーチし、デザインや言語に落とし込む「デザインビジョン」と、デザイナー同士で毎週行う「SHINGI」とは?

 本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、そしてどのように磨けばいいのかについて、失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

 今回は前々回前回に引き続き、ソニー クリエイティブセンター センター長の長谷川豊さんにご登場いただきます。前回は「クリエイティブセンターの役割はソニーの目指す未来を、デザインを通して伝えることにある。それも、ハードとして役立つことに限らず、ソフトとして人の感覚や心情に働きかけることまでが含まれている」こと。また、「デザインとは技術を翻訳することであり、デザイナーの仕事は分野を超えて束ねて編集していくことにある」とおっしゃっていました。つまり、商品だけにとどまらず、それをどう伝えるか――。カタログや店頭、売り方など広い視野を持ち、未来を提案していく力が問われているといったお話を伺いました。

 今回は、まだ見えない未来について、クリエイティブセンターのデザイナーはどのように捉え、新しい提案を行うのか、成果はどこにあるのかについて聞いています。

自らリサーチに出てアウトプットする活動「デザインビジョン」

川島 クリエイティングセンターは未来に向けたデザイン提案を行っていく役割を担っていると伺いましたが、具体的にどのようなことをしているのですか。

長谷川 ソニーのデザインでは「デザインビジョン」という部門としての活動があり、デザイナーが独自にリサーチし、そこからアウトプットする活動を続けています。俗にいうゼネラルトレンド情報、例えば技術のトレンド情報などは専門としている企業からレクチャーを受けるのですが、それはいわゆるインプットの1つ。そこを土台に、デザイナーは何にフォーカスするかを自ら考え、「ここに行って、こういう体験をして、こういうアウトプットをする」という企画を練って、リサーチに行くのです。欧州と中国、シンガポールに拠点があるので、海外のメンバーと一緒に行います。

川島 どこにでも行けるなんていいなぁと思いますが、単に行って見てくるだけでは終わらないのですよね。

長谷川 もちろんです。何をテーマにしてどこに行くかについては、感と勘を働かせて選ぶことが肝要です。膨大にあふれている情報の中から、未来に向けた人の暮らしをデザインするに当たって、これから必要な情報は何か、どこに行けば心身で感じ取れるのか。それをつかむと同時に、ビジュアルと併せて言語化することも大事にしています。

ソニー VP クリエイティブセンター センター長の長谷川豊氏は1990年にソニー入社。幅広い商品カテゴリーやデザイン領域、海外デザインセンターの立ち上げなどを経て、2014年よりセンター長を務める。Sony Designをけん引することに加え、経済産業省・特許庁が17年度に立ち上げた「産業競争力とデザインを考える研究会」の研究員を務め、日本におけるデザイン経営の実践・推進活動を担っている
ソニー VP クリエイティブセンター センター長の長谷川豊氏は1990年にソニー入社。幅広い商品カテゴリーやデザイン領域、海外デザインセンターの立ち上げなどを経て、2014年よりセンター長を務める。Sony Designをけん引することに加え、経済産業省・特許庁が17年度に立ち上げた「産業競争力とデザインを考える研究会」の研究員を務め、日本におけるデザイン経営の実践・推進活動を担っている

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