ソニーのデザイン部門を指揮する長谷川豊氏は「うちのデザイナーが担う役割は、ソニーが持っている技術をどのように編集して翻訳するかということ。どの技術をどのように盛り込み、それをユーザーにどう翻訳して伝えていくか」と言います。

 本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に勘や感は必要なのか、どのように磨けばいいのかについて、成功談も失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

 今回は、ソニーのVP(バイスプレジデント)でクリエイティブセンターのセンター長である長谷川豊さんにご登場いただきました。ソニーと言えば、かつてはシャープな勘と感を持ち、世界に向けて新しいこと、面白いことを発信する企業。私の中では仰ぎ見ている存在の1つでした。それが海外勢に押され、少し元気がなくなっているのではと勝手に心配していたのです。

 ところが最近、派手ではないものの、デザインが前に立った元気な動きが出てきています。例えば、ソニー創業70周年を記念して出版した書籍「Sony Design: MAKING MODERN」や、世界のデザインが一堂に会するミラノデザインウィークへの出展など。デザインを経営資源として大事にしていること、それを世界に向けて発信していることが伝わってきます。クリエイティブセンターの活動を知りたくなり、長谷川さんに話を聞きに行きました。

ソニー VP クリエイティブセンター センター長の長谷川豊氏は1990年にソニー入社。幅広い商品カテゴリーやデザイン領域、海外デザインセンターの立ち上げなどを経て、2014年よりセンター長を務める。Sony Designをけん引することに加え、経済産業省・特許庁が17年度に立ち上げた「産業競争力とデザインを考える研究会」の研究員を務め、日本におけるデザイン経営の実践・推進活動を担っている
ソニー VP クリエイティブセンター センター長の長谷川豊氏は1990年にソニー入社。幅広い商品カテゴリーやデザイン領域、海外デザインセンターの立ち上げなどを経て、2014年よりセンター長を務める。Sony Designをけん引することに加え、経済産業省・特許庁が17年度に立ち上げた「産業競争力とデザインを考える研究会」の研究員を務め、日本におけるデザイン経営の実践・推進活動を担っている

社内デザイナーだけでミラノデザインウィーク出展

川島 毎年4月に開催されるミラノサローネの取材を毎年続けていますが、「ミラノデザインウィーク 2019」のソニーは魅力的でした。大半の日本企業が外部のクリエイターを立てている中、ソニーは全部自力でやっていたし、その内容が分かりやすく、面白かったのです。

「ミラノデザインウィーク 2019」では「Affinity in Autonomy<共生するロボティクス>」をテーマに、5つの展示で人とロボティクスの親和性が高まっていく過程を表現。「Awakening<意識>」の過程では暗闇の中にロボティクスの知性の表現として光や音が現れ、人をセンシングして反応する
「ミラノデザインウィーク 2019」では「Affinity in Autonomy<共生するロボティクス>」をテーマに、5つの展示で人とロボティクスの親和性が高まっていく過程を表現。「Awakening<意識>」の過程では暗闇の中にロボティクスの知性の表現として光や音が現れ、人をセンシングして反応する
ミラノデザインウィーク 2019の展示。自律性を備えたロボティクスが人の存在に反応し、視線を向けるように動きを変化させる「Autonomous<自律>」の過程
ミラノデザインウィーク 2019の展示。自律性を備えたロボティクスが人の存在に反応し、視線を向けるように動きを変化させる「Autonomous<自律>」の過程

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