アパレル大手、ストライプインターナショナルの石川康晴社長は「リアル店舗あるいはECだけで買っている人に比べて両方で買っている人の年間購入金額は5倍。オムニチャネルには大きな市場がある」という。
本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、どのように磨けばいいのかについて、成功談も失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。
今回は前回、前々回に続き、ストライプインターナショナルの石川康晴社長に登場いただきます。同社は、ファッションブランド「earth music & ecology(アースミュージック&エコロジー)」をはじめ、飲食やホテルなど、幅広い事業を展開しています。
前回は同社がフェアサプライチェーンを目指し、エシカルな取り組みを実行していること。ロープライス・ハイクオリティーを独自領域とし、徹底して攻めていくこと。一方で営業利益の30%以上はR&Dに回し、企業としての成長・進化を図ってきたこと。これからの戦略の中でオムニチャネルを狙っていく重要性などについて伺いました。
今回は、オムニチャネルを含め、ファッション業界が遅れをとっているデジタル戦略について、石川さん自身がどうやって時代の潮流を読んでいるのかについて聞いています。
川島 ファッション業界において、オムニチャネルを綿密にやっていくかどうかが今後の成否を分けるという前回のお話、少しショッキングでした。
石川 うちのお客様のデータを少し紹介しましょう。リアル店舗だけで買っている人は年間1万6000円、ECだけで買っている人も年間1万6000円ですが、両方で買っている人は8万円を超えているのです。つまりそこに5倍もの格差がある。他のアパレルの話を聞いても、やはり4~5倍というところが少なくないようです。これは何を意味しているかというと、リアルだけあるいはECだけよりもオムニチャネルのほうがはるかに大きな市場を獲得できるということです。
ECの拡大がデペロッパーの利益にもなる理由とは
川島 そんなに差があるとはびっくりです。どうしてアパレルは、オムニチャネルをもっとやらないのですか。
石川 理由のひとつは、アパレルが店を構えているデベロッパーが良しとしないからです。でも、リアル店舗で獲得したお客様にECでしか売らないものをプッシュすることは、デベロッパーにとって利益につながることは間違いないのです。
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