山を一つ越えたら、次に向かってほしい

川島 その意味では、ファッション小売業も曲がり角にあって、なかなか夢が描けない状況が続いています。

新井 百貨店やショッピングモールをはじめ、ファッションビルも厳しい局面にあります。そんな中で、私は中間組織や機能はいらなくなっていくと捉えています。例えば本来的な機能を果たしていない卸業などは昔ながらの業界構造の中にまだ残ってはいますが、これからどんどん淘汰されていく時代を迎えています。なぜなら、ものも情報もニーズも、作り手と使い手が相互にやり取りするダイレクトなビジネスが主流になりつつあるからです。

川島 そういう大変革の時期に、ルミネは相変わらず成果を出し続けていますが、将来をどう見ていますか。

新井 決して安泰ではなく、次の時代に向けてもっと変革し、新たな領域での挑戦をしていかなくてはならないと考えています。山を一つ越えたら、次に向かってほしいと思うのです。自分では富士山に登っていて、もうすぐ頂上に着くと思っているようでも、いつかはエベレストに登ってほしいということです。そこそこのレベルにとどまることなく、世界最高峰の高みに挑むくらいの高い志と情熱を持つことが大事です。

川島 世界最高峰と言われ、怖気づく人もいるのでは?

新井 失敗してもいい。何度も挑戦し、経験を積み重ねることが大切なのです。そしてなぜ最高峰を目指してほしいかというと、高い山は低い山に比べ、圧倒的に広く雄大な裾野を持っているからです。つまり、高い山を望むには、広い裾野=業容を備えていなければなりません。広い裾野があるからこそ、高いレベルに到達できると思っています。

川島 ルミネは、新井さんが経営トップに立って6年が過ぎようとしていますが、社員の勘や感が磨かれてきたという手応えはありますか。

新井 随分と変わってきたと思います。まず、上から指示を出さなくても、自分たちでさまざまな提案をするようになってきました。ルミネの企業理念は「お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。」ですが、それをどう具現化しようかということを踏まえた提案や、本当の独自価値はどこにあるのかを考えた提案といったものが出てきています。

川島 新井さんの思いが伝わって形になってきたということですね。

新井 組織の中の歯車で終わらないでほしいのです。つまり、自分ができることは何なのか、どういうふうに企業や社会に貢献できるのかを日々考えて行動することです。一度しかない限られた人生を生きるなら、ある仕組みの中で同じことを繰り返すのではなく、自分なりの関わり方をして必死に生きていくほうが良いのではないでしょうか。

川島 いい会社ですね(笑)

新井 最近は「新しいことに挑戦できそうだからルミネに入りたい」という若い人も出てきていてありがたいのですが、逆に会社としてそれにしっかり応えていかなくてはと、自分を戒めています。

川島 経営トップが夢を語ってくれると、社員の心は動きます。ますますこれからのルミネが楽しみになりました。ありがとうございました。

(写真/的野弘路)