アーカイブとしての「虎屋文庫」の存在と意味

川島 それから地下にあるギャラリーも魅力的です。こけら落としは「とらやの羊羹デザイン展」で、大正7年(1918年)の「菓子見本帳」に描かれた羊羹のデザインなどが展示されていて面白く拝見しました。素晴らしいアーカイブをお持ちだから、ああいった展示もできるのですね。

オープン時、地下にあるギャラリーでは「とらやの羊羹デザイン展」を開催
オープン時、地下にあるギャラリーでは「とらやの羊羹デザイン展」を開催

黒川 私の曽祖父が菓子関係の史料をはじめ、古いものを集めるのが好きだったのです。そして日本美術史を専攻していた父が、虎屋の史料を管理する目的で「虎屋文庫」という部署を設けました。虎屋が持っているものを、お客様をはじめ、多くの方々にお見せしたいという気持ちが強かったようです。以来、虎屋文庫では歴代の古文書や古器物、古い菓子の木型や道具類などを保管。菓子や食文化に関する資料も収集し、それらを基にした調査研究を行ってきました。

川島 以前も赤坂本社ビルの「虎屋ギャラリー」で、定期的に和菓子にまつわる展示を行ってきました。

黒川 年に1、2回のペースで80回くらい続けてきました。担当者も楽しんでやっているようで、展示のたびにテーマに沿った菓子を作るのですが、今はもう作っていない菓子を再現することもありました。どんな材料でどのように作ったのか、文献資料から想像するしかないこともあり、虎屋文庫の担当者が職人と話し合いながら試行錯誤して作ってきたのです。

川島 ギャラリーの存在によって虎屋文庫が保有しているアーカイブの価値がお客様に伝わるとともに、社内向けにも自社の歴史を知ったり技を磨く刺激になったりと、とても大きな財産ですね。

黒川 ありがとうございます。赤坂店には新たに専属のギャラリー担当者を配置しました。彼女らが中心となって、今後は展示だけでなく講演会なども行っていく予定でして、詰めれば80席くらいご用意できます。もしかしたら、落語みたいなものとか、若い方たちがあのスペースを生かして展示会みたいなことをやってもいいと考えています。もちろん、虎屋文庫による展示も、来年度以降も予定しております。

川島 老舗企業というと保守的で閉鎖的というイメージがありますが、虎屋には誰にでも門戸が開かれているイメージがあります。黒川さんのお考えがそのまま企業の姿勢になっていると感じました。次回は勘と感についてのお話を伺いたいと思います。

虎屋社長、反対を押し切って店内に「自販機」を設置した真意(画像)

(写真/鈴木愛子)