現実は想定外のことがどんどん起きてくる

川島 言われてみれば、そうかもしれません。急いでいるのに、店員さんが丁寧過ぎてイライラしちゃうことってありますから(笑)。「ポイントカードはお持ちですか。すぐお作りできます」とか「入り口までお送りさせていただきます」とか。「さっさと店を出たいのに」と気が急いてしまうので。

黒川 さらに、「羊羹を一つだけ欲しい」というお客様もいらっしゃると思います。そういうとき、「一つください」と販売員に言うよりは、自動販売機のほうが気楽に買っていただけるのかな、と。

自販機では小さな羊羹を詰め合わせた「羊羹アラカルト」を販売
自販機では小さな羊羹を詰め合わせた「羊羹アラカルト」を販売

川島 なるほど。でも黒川さん、会社の中で何か新しいことをやってみるとき、ありがちなのは「絶対に成功するのか」と問われることです。でも、こうやってお話を伺っていると、慎重に考えながらも「まずはやってみる」という姿勢なのですね。開かれた企業と感じます。

黒川 めまぐるしく動く世界の中で自分がふらつかないためには、まず自分から行動して変わらなくてはならないと思います。何事もそうかもしれませんが、実際にやってみて、お客様の反応や社員の動きを見ながら、変えていったほうがいいところはどんどん変えていけばいいと思います。

 やる前にあれこれ想定ばかりしていても、現実は想定外のことがたくさん起きてくるわけですから。先日、お年を召された方がいらしたので、「エレベーターはこちらです」とご案内したら、「リハビリにちょうどいいから」と階段を上がって行かれました。そういう場面に出会うと、まだまだやれること、変えていけることがあると思うのです。

川島 あの階段を、リハビリも兼ねて上りたいとおっしゃるのもうなずけます。ゆったりした木造りで、上りやすそうだし印象的だし。

黒川 お孫さんが階段を行ったり来たりして、お婆様がそれを楽しそうに眺めていらっしゃる。休日はそんな光景を目にすることもあります。実はあの階段について、どういうものが上り下りしやすいかというところを、随分と議論したのです。幅や段差もいろいろ工夫し、幅については通常の2倍くらいにしています。広くとることによって、気分的にゆとりを感じていただけるのではないかと。

川島 せかせかした気持ちが自然とゆったりしてくる、深呼吸したくなるような気分になることができます。豊かに広がっている御所の緑が望めるのも、とても贅沢ですね。

木を多用し、ゆったりと作られた階段
木を多用し、ゆったりと作られた階段